欧州連合(EU)が初めて国際カーボンクレジットを2040年の気候目標に組み込み、炭素除去(CDR)の市場づくりが本格化している。こうした中、米国拠点の業界団体カーボン・ビジネス・カウンシル(CO2BC)は、欧州での活動を強化する方針を発表した。今年7月から欧州に広報責任者を常駐させ、政策立案者、企業、NGOと連携しながら、国際的な知見を提供して市場の成長を後押しする。
カーボン・ビジネス・カウンシルは世界100社以上のCDR企業を代表し、バイオ炭やコンクリート固定、岩石風化促進(ERW)など多様な技術を網羅している。欧州ではフィンランドのカーボカルチャー(Carboculture)、フランスのクライムファイ(ClimeFi)、スイスのノイシュタルク(Neustark)、英国のアンドゥ(UNDO)などが加盟し、すでに現地で事業を展開中だ。ベン・ルービン事務局長は「欧州が責任ある形でCDRを拡大し、競争力を高められるよう、国境を越えて専門家や情報をつなぐ」と語った。
欧州では制度面と資金面で重要な動きが重なっている。現在策定中の「炭素除去認証枠組み(CRCF)」は、除去量の計測・検証・認証方法を統一するもので、2025年まで公開協議が続く。ドイツは2025年予算案に初めてCDR専用の4.75百万ユーロ(約7億6,000万円)を計上。さらに欧州委員会は、耐久性の高い除去の需要を促すため25億〜62億ユーロ(約4,000億〜1兆円)の調達プログラムを提案している。
カーボン・ビジネス・カウンシルはこれまで、EU ETSやCRCFへの意見提出、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)や英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省への助言などを行ってきた。今後は欧州拠点を活用し、政策づくりや企業支援、パートナーシップ形成を通じて、域内のCDR市場をさらに発展させる考えだ。