欧州議会は11月13日、2040年までに温室効果ガス(GHG)の純排出量を1990年比で90%削減するという、法的拘束力のある中間目標を設定する欧州気候法改正案について、「国際カーボンクレジット」の活用上限を欧州委員会提案より引き上げる立場を採択した。この決定は、EUの気候変動対策目標の達成において、カーボンクレジットと炭素除去(CDR)が果たす役割の拡大を示唆するもので、今後の加盟国との交渉の焦点となる。
国際カーボンクレジットと国内CDR活用の柔軟性拡大
欧州議会は、グリーン移行とEUの競争力向上は両立するという考えに基づき、目標達成方法の柔軟性強化に合意した。
国際カーボンクレジットの上限拡大
2036年以降、排出量削減の最大5パーセンテージポイント分を、「高品質な国際カーボンクレジット」で代替することを可能にするよう求めた。これは、欧州委員会(European Commission)が提案していた上限3パーセンテージポイントを上回るものであり、議会は、このクレジット利用に際して強固なセーフガードを設けることを要求している。
国内炭素除去(CDR)のEU ETSへの利用
欧州議会議員(MEPs)はまた、国内での永続的な炭素除去(Carbon Removals)を、排出量削減が困難な部門(hard-to-abate emissions)における排出量と相殺するため、欧州排出量取引制度(EU ETS:EU Emissions Trading System)内で利用可能とすることも求めている。これは、可能な限り費用対効果の高い方法で目標を達成するため、部門や手段を横断した柔軟性を高めるためだ。
ETS2の導入延期と目標の定期見直し
EUの新たな排出量取引制度であるETS2(建物および道路輸送からのCO2排出を対象)について、加盟国の提案を支持し、導入時期を2027年から2028年へ1年間延期することに賛同した。
さらに議会は、目標達成に向けた進捗を2年ごとに評価するよう欧州委員会に要求。この見直しでは、最新の科学的データ、技術開発、EUの国際競争力に加え、EUレベルでの純除去(net removals)の状況が2040年目標達成に十分であるかどうかが評価される。このレビュー結果に基づき、必要に応じて欧州委員会はEU気候法の改正を提案し、2040年目標の修正や、EUの競争力などを守るための追加措置を講じる可能性がある。
今回の議会の立場は、賛成379、反対248、棄権10で採択され、今後、最終的な法案の策定に向けて加盟国との交渉に入る準備が整った。この目標設定は、11月10日から21日までブラジル・ベレンで開催される第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)におけるEUの国際公約を果たす上でも重要である。