米環境保護庁(EPA)は11月12日、炭素回収・貯留(CCS)技術で利用される地下深部への二酸化炭素(CO2)圧入井である「クラスVI地下圧入井(Class VI wells)」の許認可権限をテキサス州に移譲する最終規則を発表した。これにより、テキサス州はノースダコタ州やルイジアナ州などと並び、国内でわずか6番目に独自にクラスVI井の許認可プログラムを運営する州となる。
今回の決定は、テキサス州が連邦政府の基準を満たす独自の地下圧入規制プログラム(UIC)を確立したことを認めたものであり、連邦レベルでの審査の長期化がボトルネックとなっていたCCSプロジェクトの展開を大幅に迅速化させる「ゲームチェンジャー」として歓迎されている。
認可権限移譲で許認可プロセスを大幅に効率化
EPAは、テキサス州の地下圧入規制(UIC)プログラムが、安全飲料水法(SDWA)の要件を完全に満たしていると判断した。この移譲により、テキサス州は州内のすべての地下圧入井(クラスI〜VI)の規制監督を一元化することができ、規制の重複解消と効率性の向上が見込まれる。
テキサス州は米国のエネルギー生産における中心地であり、巨大な地下の貯留ポテンシャルを有している。ヒューストンCCSアライアンスは、「今回のEPAの決定は、テキサス州にとってゲームチェンジャーである」とし、「ヒューストン地域および州全体での大規模なCCS開発の可能性を実現するための重要な一歩となる」との声明を発表した。
EPAのスコット・メイソン地域管理官は、「テキサス州の要請承認は、協調的連邦主義にとって大きな前進だ」と述べ、テキサス州鉄道委員会(Railroad Commission of Texas)がクラスVI井の監督プログラムを追加する準備が整っていることを実証したと指摘した。テキサス州鉄道委員会は、エネルギー生産や地質学的な専門知識を持つ機関である。
カーボンクレジット市場への直接的な影響
この決定は、CO2を永続的に地中貯留するプロジェクトが生み出す「CDRクレジット」の供給ポテンシャルに直接的に影響する。許認可プロセスが州レベルで効率化されることで、CCSプロジェクトの初期段階での時間とコストが削減され、プロジェクト開発が加速する。
これにより、CCSプロジェクトの実現数が増加し、その結果として、企業がネットゼロ目標達成のために必要とする高品質なCDRクレジットの供給が促進されることが期待される。上院議員や下院議員を含むテキサス州選出の複数の連邦議員も、この決定を「不必要な規制の重複を解消し、投資と雇用を促進する」ものとして強く支持した。
テキサス州のジム・ライト鉄道委員会委員長は、「クラスVIプライマシー(一次執行責任)の獲得は、エネルギー部門と市民にとって重要な前進だ。連邦レベルの遅延は重要な炭素回収プロジェクトを減速させてきたが、今後はテキサス州がリーダーシップを発揮する」と述べた。
この最終規則は、官報に掲載されてから30日後に発効する予定だが、連邦政府の予算失効により掲載が遅れる可能性も示唆されている。