IKEA、ブラジルで160億円の「森を使ったCO2除去」始動 BTG Pactualと連携し約4,000ヘクタールの森林再生へ

村山 大翔

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スウェーデンの家具大手イケアを展開するインター・イケア・グループ(Inter IKEA Group)は11月10日、ブラジル南部で森林再生型の炭素除去(CDR)プロジェクトを開始すると発表した。投資額は約1億800万ドル(約163億円)で、同社が掲げる自然を基盤とする世界的なCDRコミットメントの第1弾となる。現地では投資銀行BTGパクチュアル傘下のティンバーランド・インベストメント・グループ(BTG Pactual Timberland Investment Group、以下BTG TIG)と共同で実施する。

プロジェクトは、ブラジル南部のパラナ州とサンタカタリーナ州にまたがる大西洋岸森林(アトランティック・フォレスト)生物圏の劣化地約4,000ヘクタールを対象に、森林の保全・再生・商業林経営を一体的に行う。熱帯地域の再生林と持続的土地利用の両立を実証し、長期的な炭素貯留と地域経済の共存モデルを構築することを狙う。

大西洋岸森林はかつて130万平方キロメートル超を覆っていたが、現在は原面積の約13%まで減少している。イケアとBTG TIGはこの危機的状況に対応するため、放牧地などの劣化地を再植林するとともに、一部を森林管理協議会(FSC)認証を目指すパイン(松)プランテーションとして運営する。これにより地域の雇用創出と木材供給の持続的収益源を確保し、再生・保全の資金循環を生み出す。

炭素吸収量は土壌およびバイオマス両方で測定され、外部の独立検証機関により定期的にモニタリングされる。さらに、環境NGOや学識者からなる独立アドバイザリーパネルが設置され、社会的・生態系的な影響を科学的に評価する。このパネルには、ブラジルの有力環境団体アプレマヴィ(Apremavi)も参加する。

アプレマヴィ共同創設者のミリアム・プロヒノウ氏は「気候変動の影響が深刻化する中、生物多様性と水資源の保全を重視したこの取り組みに協働できることを嬉しく思う」と述べた。

インター・イケアのグローバル原材料部門責任者ウルフ・ヨハンソン氏は「イケアは木材利用の大口企業として責任を自覚している。再生・保全・生産林経営の三位一体による気候変動対策の実践モデルを示したい」と語った。

BTG TIGの責任者ゲリティ・ランシング氏は「イケアは持続可能なサプライチェーンの構築に向け、行動でリーダーシップを示している。我々はこの協働により、人と自然と気候のための実質的な成果を証明したい」と強調した。

イケアは2030年までにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を2016年度比で半減し、2050年までにネットゼロを達成する目標を掲げる。その実現に向け、排出削減と並行して、自然由来の炭素吸収源への投資拡大を進めている。

参考:https://www.ikea.com/global/en/newsroom/corporate/inter-ikea-group-announces-forest-investment-in-brazil-251106/