米農業スタートアップのインディゴ・アグリカルチャー(Indigo Agriculture)は11月4日、ボランタリーカーボンクレジット市場のICVCMが米国版土壌改良プロトコルを同機関のCCPs認証基準に正式承認したと発表した。これにより、同社の「カーボン・バイ・インディゴ」プログラムで発行される土壌カーボンクレジットが、国際的に最も厳格な科学的・社会的基準を満たすものとして認定された。
ICVCMによる今回の承認は、土壌が地球上で最も強力かつ拡張可能な炭素吸収源の一つであることを改めて確認するものとなった。これにより、買い手や農家は、どのカーボンクレジットが高品質な基準を満たしているかを明確に把握できるようになり、信頼性の高いCDRへの資金流入が期待される。
カーボンプラットフォーム企業パッチ(Patch)の共同創業者兼最高経営責任者ブレナン・スペラシー氏は、「カーボンクレジット市場における品質の検証可能性への流れはもはや不可逆だ」と述べた上で、「CCP認証を得たクレジット、たとえばインディゴのものは、環境効果と信頼性を最大化したい買い手から特に高い需要がある。当社の最新データでは、買い手の40%がCCP認証済みカーボンクレジットを明確に優先している」と語った。
インディゴは、農業土壌を用いた炭素吸収(ソイル・カーボン・シークエストレーション)を主軸とする再生型農業(リジェネラティブ・アグリカルチャー)の実践を支援しており、これまでに約90万件のカーボンクレジットを発行している。各クレジットは、1トンのCO2換算(CO2e)の削減または除去を厳格な測定・報告・検証(MRV)によって裏付けたものだ。
同社のプログラムでは、カーボンクレジット販売収益のうち業界最高水準の分配率が農家に還元されており、極端気象や市場変動に苦しむ農家にとって新たな収入源となっている。
インディゴのインパクト&インテグリティ部門責任者マックス・デュビュイソン氏は、「これは土壌炭素市場と、それを支える農家にとって大きな節目だ」と述べ、「過去10年以上にわたり、私たちは再生型農業を通じて実証的かつ測定可能な成果を積み上げてきた。ICVCMの認定は、農家・土壌・地域社会への投資をさらに加速させる重要な一歩になる」と強調した。
土壌炭素除去は、既存の農地で実施可能な「最も即効性と拡張性の高い炭素除去手法」とされる。カバークロップ(被覆作物)や不耕起栽培の導入によって土壌中の有機炭素を蓄積し、生態系の健全化にも寄与する。科学的裏付けに基づくこの手法を、インディゴ社は農業現場で実装可能な形に翻訳し、すでに市場で販売を開始している。
ICVCMのCCPsは、ボランタリー市場の信頼性を高めるための国際基準であり、透明性・追加性・持続性など10の原則から構成される。今回の土壌改良プロトコルの承認は、再生型農業がもはや実験段階ではなく、信頼できる炭素除去ソリューションとして正式に位置づけられたことを意味する。
インディゴはこれまでに米国内の農地から累計100万トン超の炭素を削減・除去し、農家に数千万ドル(約数十億円)を還元してきた。今後も同社は、科学的根拠と市場の信頼性を両立させるモデルとして、土壌炭素市場の拡大を主導するとしている。