ニュージーランド政府、「非森林型CO2除去」を正式評価へ 気候変動法改正でカーボンクレジット市場の多様化を促進

村山 大翔

村山 大翔

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ニュージーランド政府は、炭素除去(CDR)プロジェクトの新たな評価基準「カーボンリムーバル評価フレームワーク」を公表し、同時に気候変動対応法(CCRA)の大幅な改正方針を明らかにした。発表したのはサイモン・ワッツ気候変動相で、非森林型のCDR活動を正式に認識・報酬対象とする初の制度的枠組みとなる。

ワッツ氏は声明で「このフレームワークは、森林以外の炭素除去を正当に評価し、農地や企業の新たな収益機会を解き放つ重要な一歩だ」と述べ、「気候変動対策と経済成長を両立させる政府の姿勢を示すものだ」と強調した。今回の施策は第2次排出削減計画の優先課題の一つであり、選挙公約に掲げた「生物多様性クレジット制度」の検討も進める。

政府は、湿地再生やピート地の再湿潤化など、自然基盤型のCDRを対象に、市場アクセスのための科学的要件を整理。2026年前半には、プロジェクト評価の申請ツールを環境省が公開する予定だ。

CCRA改正でNZ ETS(排出量取引制度)の柔軟性を拡大

同時に、政府はCCRAの見直しを進め、ニュージーランド排出量取引制度(NZ ETS)の運用効率と市場確実性を高める方針を示した。主な改正点は以下の通りである。

  • 年次見直しを隔年(2年ごと)に変更し、市場の安定性を確保。
  • 産業向け無償配分(Industrial Allocation)の制度を見直し、脱炭素投資の阻害要因を軽減。
  • ETS設定がパリ協定の国別貢献目標(NDC)に「適合」する義務を削除。
  • CDR活動をETSで認定可能な新カテゴリーとして追加。

これにより、森林以外の除去手法—たとえばバイオ炭や炭素鉱物化など—の市場参入が将来的に容易になる見通しだ。

ワッツ氏は「複雑で重複した制度を整理し、政府と企業の負担を軽減することで、実効性ある排出削減を加速する」と述べ、「気候目標の水準を下げるものではない」と強調した。

政府機関のカーボンニュートラル目標、2050年に延期

一方、政府は「カーボン・ニュートラル・ガバメント・プログラム(Carbon Neutral Government Programme)」の達成年限を、従来の2025年から2050年に延期した。これは「短期間での実質排出削減が困難であり、国内オフセット供給量が不足している」ことを理由とする。

政府は「排出削減を優先し、カーボンオフセットは最後の手段とする」という国際的ベストプラクティスに沿う形で方針を修正。各政府機関には、引き続き排出量の測定・報告・削減が義務づけられる。

今後の立法スケジュール

改正法案は2026年の議会提出を予定しており、ETS市場ガバナンスや国家適応計画の優先分野を含む「第1次改正法案」としてまとめられる見通し。また、メタン排出目標の法定化を含む別法案が2025年末までに成立する予定である。

ニュージーランドは既に2050年までのネットゼロを法制化しているが、今回の改正により、カーボンリムーバルと市場制度の連携が強化される。これにより、自然由来および技術型CDRの両輪で排出削減を推進する体制が整うことになる。

参考:https://www.beehive.govt.nz/release/improving-new-zealand%E2%80%99s-climate-change-act