カタール国営エネルギー企業のカタールエナジー(QatarEnergy)は11月2日、同国ラスラファン工業都市における新たな炭素回収・貯留(CCS)施設の設計・調達・建設(EPC)契約を韓国のサムスンC&T(Samsung C&T)に発注したと発表した。稼働後の年間CO2回収量は410万トンに達する見通しで、世界最大級の規模となる。
本プロジェクトは、既存の液化天然ガス(LNG)生産拠点から排出されるCO2を恒久的に地下に封じ込めるもので、同国のCCSポートフォリオ拡大を象徴する取り組みとなる。カタールエナジーは「LNGバリューチェーン全体に大規模なカーボンマネジメントを統合する戦略の中核」と位置付けている。
LNG拡張と並行した脱炭素化戦略
同社のサード・シェリダ・アル=カービ最高経営責任者(CEO)は、「このマイルストーンは、我々が低炭素エネルギー供給者としての責任を果たすための重要な一歩だ。2035年までに年間1,100万トンのCO2を回収する」と述べた。すべてのLNG拡張プロジェクトにCCS技術を組み込む方針を示している。
カタールでは現在、2019年に稼働した初のCCSプロジェクト(年220万トン)に加え、北フィールド東部(North Field East)および南部(North Field South)拡張に関連する2基のシステムが建設中で、それぞれ210万トン、120万トンのCO2を年間回収する計画だ。これらが全て稼働すれば、カタールの総CCS能力は750万トンを超える。
同国は今後、LNG生産能力を現在の7,700万トンから2030年代初頭までに1億6,000万トンへ倍増させる計画で、国内拡張に加え米テキサス州のゴールデンパスLNGプロジェクトも推進中である。
再エネ併用で総合的脱炭素化を推進
カタールエナジーは同時に、再生可能エネルギー事業も拡大している。サムスンC&Tは、同社から出力2,000メガワットのドゥカーン太陽光発電所の建設も受注した。第1期(1,000メガワット)は2028年稼働予定で、2029年半ばの全面稼働を目指す。
同社によると、ドゥカーンを含むアル=カルサー、ムサイード、ラスラファンの各太陽光発電所の合計で年間約470万トンのCO2削減効果が見込まれ、カタールの最大電力需要の3割を賄う可能性がある。
中東のCCSハブ化を主導
中東地域では近年、UAEのアドノック(ADNOC)やサウジアラムコ(Saudi Aramco)も大規模CCS投資を進めているが、今回の案件によりカタールは域内最大のCO2回収能力を持つ国となる見通しだ。CO2を削減することで、自国産LNGのカーボンニュートラル化を進め、欧州やアジア市場での競争力強化を狙う。
参考:https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3865