米グーグル(Google)は9月19日、ブラジルの炭素除去(CDR)スタートアップ、モンバック(Mombak)と提携し、2030年までに5万トンの自然由来CDRクレジットを購入すると発表した。これはグーグルにとって初の「自然由来カーボンクレジット」購入であり、同社がブラジルのカーボンプロジェクトに関与するのも初めてとなる。
今回の契約は、モンバックが進めるアマゾン地域の劣化牧草地を生物多様性豊かな森林へと再生する取り組みを支援するもの。CO2除去量を科学的に測定し、長期的な気候影響を裏付けるモデルとして注目されている。グーグル側は、「気候影響の確実性を担保することが本分野の最大の課題だ」と述べ、この取引が持つ実証的意義を強調した。
自然由来CDRへの戦略転換
グーグルはこれまで、直接空気回収(DAC)などの技術由来カーボンクレジットに注力してきたが、今回の提携により、自然由来CDRを同社の脱炭素ポートフォリオに本格的に組み込む姿勢を示した。モンバックはすでにマイクロソフト(Microsoft)やマクラーレン(McLaren)とも契約を結んでおり、商業的勢いを強めている。
さらにグーグルは、メタ(Meta)、マイクロソフト、セールスフォース(Salesforce)と共同で設立した新組織「シンビオシス・コアリション(Symbiosis Coalition)」にも参加。高品質な自然再生型プロジェクトの国際基準づくりを主導している。
プロジェクトの品質基準
モンバックは、自社の森林再生プロジェクトを以下の厳格な設計基準で運用している。
- 100年の耐久性:法的・契約的に保護された森林と継続的モニタリング体制
 - 生態系多様性:在来種による混植で気候変動耐性を強化
 - IFC基準遵守:国際金融公社(IFC)の環境・社会パフォーマンス基準に準拠
 - 追加性の確保:動的ベースラインを用いて「炭素資金がなければ実現しなかった」除去量を定量化
 - 地域住民の参画:長期的な生計機会を創出
 - リーケージ防止:周辺農業の生産性向上投資で間接的排出増を回避
 
こうした厳格な運用を通じ、モンバックは「自然由来CDR」の信頼性を高めるとともに、カーボンクレジット市場全体の透明性向上にも寄与している。
世界最大級の森林型CDR開発者へ
モンバックの最高製品責任者(CPO)ダン・ハーバーグ氏は、「この提携は、私たちが世界最大かつ最も影響力のある炭素除去プロジェクト開発者となるための重要な節目だ」と述べ、今後も高品質な自然由来CDR事業の拡大を進める方針を示した。
グーグルのCDR責任者ランディ・スポック氏は「森林型CDRへの初の購入を通じて、気候影響を確実に測定できる手法を実証したい」と語った。両社は今後もシンビオシス・コアリションを通じて、透明性と持続性の高いCDRプロジェクトの普及を推進する見通しだ。