パナマ環境省とO.N.E Amazonが覚書締結 ダリエン地域保全と新たな自然資本ファイナンスモデルを推進

村山 大翔

村山 大翔

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パナマ共和国環境省と自然資本投資企業ワン・アマゾン(O.N.E Amazon)は10月30日、同国南東部のダリエン地域での長期的な環境保全事業の設計・実施に関する覚書(LOI)を締結した。署名は「パナマ・ネイチャー・サミット2025」のハイレベルセッション「From Protection to Prosperity(保護から繁栄へ)」で行われた。両者は、森林・生物多様性保護、気候変動対策、グリーンエコノミー推進などの分野で協力を強化する方針を示した。

今回の協定は、パナマ政府が掲げる「ネイチャー・プレッジ」に沿ったもので、2035年までに劣化地10万ヘクタールの回復と11%の排出削減を目指す。協力は以下の4分野を中心に進められる。

  1. 気候モニタリング、再植林、ブルーカーボンなどの環境技術開発
  2. 環境管理・気候教育・エネルギー転換に関する技術力強化
  3. 森林・生物多様性保全におけるデータとベストプラクティスの共有
  4. 国際的な気候行動と持続可能性への発信力向上

各プロジェクトは、科学的根拠に基づく透明な枠組みで進められ、資金のトレーサビリティとアカウンタビリティを確保する。さらに、自然資本に裏付けられたデジタル金融商品を通じ、民間投資を環境成果に直接結びつける仕組みも検討される見通しだ。

パナマのフアン・カルロス・ナバーロ環境相は「今回の提携の一環として、ワン・アマゾンは独自の『インターネット・オブ・フォレスト(IoF)』を導入し、衛星・LiDAR・地上センサーによるリアルタイムの環境データを活用する。これにより、環境ガバナンスと透明性が大きく強化される」と述べた。

ワン・アマゾンの創業者兼最高経営責任者ロドリゴ・ヴェローゾ氏は「我々は、地球上で最も貴重な生態系の保全に世界の資本を結びつけることを目的としている。パナマ政府との連携を通じ、イノベーションと透明性、共通の目的がいかに保全を経済的価値へ転換できるかを示したい」と語った。

ワン・アマゾンはすでに、ダリエン地域のフィロ・デル・タヨ=カングロン水文保護区でIoFのパイロット事業を実施しており、40以上の地域コミュニティに水を供給している。この実証事業では、検証済みデータと責任ある資金運用によって環境管理と地域生計の両立が可能であることを示した。

同社は今後、IoFのデータ基盤を活用して自然由来カーボンクレジットの発行・検証にも応用する見通しだ。ワン・アマゾンは、IoFとインパクトファンド「One Amazon Sustainability & Impact Fund(OAIF)」を中核に、アマゾン地域の生態系サービスを金融価値として可視化し、「森林破壊より保全が価値を持つ経済」を実現することを目指している。

85%の収益を現地に還元する仕組みを持つ同社のモデルは、カーボンクレジット市場における「責任ある自然資本投資」の新しい形として注目される。今後、2026年前半にも同社独自のデジタル資産「O.N.E Amazon Coin(OAC)」の発行が予定されている。

参考:https://www.businesswire.com/news/home/20251030017909/en/Panama-and-O.N.E-Amazon-Sign-a-Letter-of-Intent-to-Protect-the-Darin-Region-and-Pioneer-New-Models-of-Conservation-Finance