ICVCM 初の「持続可能な農業」手法をCCPs承認 米CARとVerraが取得

村山 大翔

村山 大翔

「ICVCM 初の「持続可能な農業」手法をCCPs承認 米CARとVerraが取得」のアイキャッチ画像

ボランタリーカーボンクレジット市場の信頼性を監督する国際組織ICVCMは10月30日、持続可能な農業分野で初めて2つのカーボンクレジット手法をCCPs認証として承認したと発表した。承認を受けたのは、米国のCARが開発した「U.S. Soil Enrichment Protocol v1.1」と、ベラ(Verra)が策定した「VM0042 Improved Agricultural Land Management v2.2」である。

これにより、農業由来の炭素吸収・排出削減プロジェクトが「高品質カーボンクレジット」として国際的に認知される道が開かれる。

土壌炭素蓄積を中心とした新カテゴリ

持続可能な農業カテゴリーは、温室効果ガス(GHG)排出の削減や土壌有機炭素(SOC)の吸収量を増加させる農法を対象とする。対象となるのは、耕起の削減、作物残渣管理の改善、輪作や放牧管理の最適化、施肥や灌漑の効率化など、多岐にわたる。これらの農法は、炭素除去(CDR)と排出削減の両面で寄与するとされる。

承認条件とクレジット発行状況

CARの「U.S. Soil Enrichment Protocol v1.1」は、最低40年間の永続性コミットメントを含むプロジェクト実施契約(PIA)が締結されていること、また輪換的または集約的な放牧を含まないことが条件として付された。これまでに約100万件のカーボンクレジットが発行され、登録済みの2プロジェクトが年間100万件超の発行を見込む。

一方、ベラの「VM0042 Improved Agricultural Land Management v2.2」は、新バージョンとして承認されたが、現時点で登録プロジェクトやクレジット発行実績はない。評価対象外の旧版を活用するプロジェクト群では、年間最大1億2,600万件の排出削減量(ERR)を生み出す潜在力があるとされる。ベラ版では、デジタル土壌マッピング(DSM)を除く測定手法を用いたSOC測定が条件となる。

「高信頼クレジットの新時代に」

ICVCM議長のアネット・ナザレス氏は「新たなカテゴリーの手法がCCPsに整合したことを歓迎する。今年承認された多くの手法の下で、2026年には大量のカーボンクレジット発行が始まるだろう」と述べた。

同カウンシルは、独立した非営利組織として、ボランタリーカーボンクレジット市場の品質基準をCCPsに基づき策定している。これは、カーボンクレジットの追加性、測定精度、持続性、環境・社会的保全などを統合的に評価する国際的な品質基準である。

日本市場への波及可能性

農業土壌由来のCDRクレジットは、これまで森林や再エネ中心だったボランタリーカーボンクレジット市場の新たな成長分野として注目される。特に日本では、農林水産省が進める「みどりの食料システム戦略」において、土壌炭素の見える化とカーボンクレジット化が重要施策に位置づけられており、今回の国際的承認は国内制度設計にも影響を与える可能性がある。

ICVCMは今後、森林炭素手法「ART–TREES(HFLD)v2.0」の再審査も予定しており、2025年中に結論を出す見通しだ。

参考:https://icvcm.org/integrity-council-approves-first-sustainable-agriculture-methodologies-from-car-and-verra/