シンガポール政府は10月31日、貿易産業省(MTI)がパリ協定第6条に準拠した「高品質カーボンクレジット」の調達に向け、第2次の提案募集(RFP)を開始したと発表した。この制度は、シンガポールが自国の温室効果ガス削減目標(NDC)を達成するため、協定締結国から国際的に認証されたカーボンクレジットを取得する仕組みである。
今回の公募は、同国がこれまで契約したガーナ、パラグアイ、ペルーに加え、ブータン、チリ、モンゴル、パプアニューギニア、ルワンダ、タイ、ベトナムなど10カ国と締結した第6条実施協定に基づき実施される。
MTIは声明で、「代替エネルギー資源に乏しいシンガポールにとって、国際協力は脱炭素化目標を実現する有効な手段だ」と強調。炭素クレジットを活用することで、国内の排出削減努力と並行しつつ、持続可能な経済機会の創出にもつなげる考えを示した。現在、国内には炭素取引・サービス分野で活動する企業が150社以上存在し、資金調達、取引、検証、法務など幅広い業務を展開しているという。
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今回の募集は、技術ベースと自然ベースの双方のプロジェクトを対象とする初の試みであり、森林保全や生物多様性の維持、エネルギー安全保障の強化といったコベネフィットを狙う。
入札は2段階で実施される。第1段階の「予備資格審査」で要件を満たした事業者が、第2段階で詳細なプロジェクト提案を提出する。
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今回の取り組みは、アジア地域でのカーボン市場構築を主導するシンガポールの姿勢を改めて示すものである。政府は、パリ協定第6条の国際的市場メカニズムを通じ、アジア諸国の炭素除去(CDR)や排出削減事業を支援しつつ、国内企業に新たな商機を提供する狙いがある。今後の入札結果は、同国のNDC達成戦略の中核をなすことが期待される。