英国政府は10月29日、温室効果ガス(GHG)削減と経済成長を両立させる新たな「炭素予算・成長実行計画(Carbon Budget and Growth Delivery Plan)」を公表した。2008年の気候変動法に基づく同計画は、エネルギー安全保障の強化、雇用創出、家庭や企業の光熱費削減を同時に進める構想を提示している。
英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(Department for Energy Security and Net Zero)によると、英国では1990年比で排出量を50%以上削減する一方、国内総生産(GDP)は80%以上拡大。気候行動が経済成長の阻害要因ではないことを示すデータとされる。
民間部門によるクリーンエネルギー投資は2024年7月以降、累計で500億ポンド(約9.8兆円)を超え、政府は2030年までに関連雇用を80万人規模へ倍増させる方針を打ち出した。再生可能エネルギーと原子力の拡大による電力価格の安定化、500万戸の断熱改修・太陽光導入支援、ゼロエミ交通や植林促進なども柱に掲げる。
気候担当大臣のケイティ・ホワイト氏は「世界をリードするカーボン予算と成長計画により、良質な雇用と投資を英国にもたらす」と強調した。
一方で、炭素市場関係者からは懸念の声も上がる。政府がボランタリーカーボンクレジット市場に関するパブリックコンサルテーションの回答を2026年まで延期したためだ。
今回の計画には、政府の「メタン行動計画」や投資家向けプロスペクタスも含まれており、英国の脱炭素移行分野での投資機会を明示している。クリーンエネルギー拡大の実行力と同時に、カーボンクレジット市場の制度的枠組み整備が今後の焦点となる。
参考:https://www.gov.uk/government/publications/carbon-budget-and-growth-delivery-plan-2025