北米のCO2除去産業が拡大 NorthXがカナダ4社に約5億円出資 「CO2除去の次世代成長を主導」

村山 大翔

村山 大翔

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カナダのクライメート・テック支援機関ノースエックス(NorthX、旧ブリティッシュコロンビア州クリーンエネルギー・イノベーションセンター(CICE))は10月29日、カナダ国内で炭素除去(CDR)技術を開発する4社に総額340万カナダドル(約5億円、2.4百万米ドル)を出資すると発表した。

投資先は、河川の炭素吸収力を再生するカーボンラン(CarbonRun)、モジュール型直接空気回収(DAC)技術を持つスカイレニュー・テクノロジーズ(Skyrenu Technologies)、バイオマスを液化して炭素を地中貯留するニューライフ・グリーンテック(NULIFE Greentech)、そして生物由来CO2を安定した重炭酸塩として海洋に固定するピーエイチアソム・テクノロジーズ(pHathom Technologies)の4社だ。

ノースエックスは、これらの企業を「スケール可能性、炭素固定の持続性、カナダ国内産業への波及効果」の観点から選定したと説明している。今回の支援は、同機関が実施する「CDRイノベーション公募(Call for CDR Innovation)」の一環である。

河川から海洋まで、CDR多様化の最前線

ノバスコシア州のカーボンランは、水力発電施設を活用して河川のアルカリ性を高め、二酸化炭素を自然吸収させる手法を採用。水系生態系の回復と炭素除去を両立させる。

ケベック州発のスカイレニュー・テクノロジーズは、反応炉を用いないモジュール型DAC装置を開発。カナダ各地の気候条件で実証されており、炭素除去のコストとエネルギー消費を大幅に抑えることを目指す。

サスカトゥーン拠点のニューライフ・グリーンテックは、水熱液化技術で廃バイオマスをバイオオイル化し、地下に安全に貯留する。廃棄物処理コストの削減と炭素固定を同時に実現する手法として注目されている。

ノバスコシア州のピーエイチアソム・テクノロジーズは、バイオマス由来CO2を重炭酸塩として海洋中に固定する技術を持つ。海洋のpHバランスを崩さずに長期的な炭素貯留を実現できる点が特徴だ。

アルカ・クライメートがマイクロソフトと契約、CDR市場の信頼高まる

同日、ノースエックスの初期投資先の一つであるアルカ・クライメート・テクノロジーズ(Arca Climate Technologies)が、米マイクロソフト(Microsoft)との間で今後10年間にわたり約30万トンのCDEを供給する契約を締結したと発表した。

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アルカは鉱物化技術によるCDRの先駆企業であり、今回の契約は同機関の早期投資戦略の有効性を裏づけるものとされる。

エネルギー・天然資源相のティム・ホッジソン氏は、「クリーン成長の次の波は、カナダのイノベーション・エコシステムが担う。ノースエックスの投資は、公共資金が民間資本を呼び込み、雇用を創出し、カナダを低炭素経済の最前線に押し上げる好例だ」と述べた。

総投資額45億円超、雇用870人創出へ

今回の発表により、ノースエックスのCDR分野での累計投資額は4,500万カナダドル(約45億円)に達した。これまでに支援したプロジェクトは72件にのぼり、今後2年間で870人以上の雇用を創出し、4億7,700万カナダドル(約477億円)の追随投資を誘発する見通しだ。

サラ・グッドマン最高経営責任者(CEO)は、「カナダの気候変動対策の野心を新しい雇用と産業に転換するのがノースエックスの使命だ。今回の投資とアルカの成果は、カナダが世界のCDR産業をリードする段階に入ったことを示している」と強調した。

北米では、産業別の脱炭素化が困難な領域を補う手段として、CDR技術の市場化が進む。今回のノースエックスの動きは、カナダが「持続的で拡張可能なCDR技術」を次世代の成長産業と位置づけ、国際競争力を高める戦略の一環と位置づけられる。

参考:https://northx.ca/announcements/northx-catalyzes-the-rise-of-canadas-carbon-removal-industry