本文へスキップ
最新ニュース
用語解説

Jブルークレジット®とは?わかりやすく解説|What Are J-Blue Credits?

2025.01.01 更新 2026.07.04 読了 約8分
Jブルークレジット®とは?わかりやすく解説|What Are J-Blue Credits?

四方を海に囲まれた海洋国家、日本。私たちの暮らしに豊かさをもたらす沿岸の海藻やアマモは、気候変動対策においても重要な役割を担っている。

本記事では、「海のゆりかご」とも呼ばれる海洋生態系が吸収するCO2を価値化し、その保全活動を支援する日本独自の取り組み「Jブルークレジット®」について、仕組みと意義を解説する。1分で要点を知りたい方はJブルークレジット®のクイック定義も参照されたい。

Jブルークレジット®とは

Jブルークレジット®とは、日本の沿岸生態系(ブルーカーボン)によるCO2吸収量をクレジットとして認証し、取引可能とする民間主導の制度である。

本制度は、一般社団法人ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が認証・運営主体となっている。最大の特徴は、マングローブ林が少ない日本の地理的特性に合わせ、コンブやワカメといった「藻場(もば)」によるCO2吸収を主要な認証対象としている点にある。

なお、Jブルークレジット®は国が運営するJ-クレジット制度とは異なる独立した民間の取り組みである。両者は日本の脱炭素化という共通の目標を持ちつつ、異なるアプローチでその実現を目指している。

なぜJブルークレジット®が重要なのか

Jブルークレジット®は、日本の沿岸域が抱える課題に対し、気候変動対策と地域経済の活性化を結びつける解決策を提示している。その重要性は主に以下の3点に集約される。

海の豊かさを守る新たな資金源

かつて豊かだった藻場は、海水温の上昇などによる「磯焼け」の影響を受け減少傾向にある。Jブルークレジット®は、藻場の再生・保全活動に企業などの民間資金を呼び込むための資金調達の仕組みを提供する。

漁業の持続可能性への貢献

藻場は魚たちの産卵場所や稚魚が育つ「海のゆりかご」であり、豊かな漁場を支える基盤である。Jブルークレジット®を通じた藻場再生は、CO2吸収に加えて日本の沿岸漁業の持続可能性を支え、漁業に関わる地域コミュニティの生計向上というコベネフィット(副次的便益)をもたらす。

ブルーカーボンへの理解促進

本制度は、「ブルーカーボン」という概念や海洋生態系の重要性に対する社会全体の理解と関心を高める役割も担っている。

仕組みと対象

認証の主体とプロセス

プロジェクトの申請から審査、クレジットの発行・管理まで、すべてのプロセスはJBEが一元的に管理している。JBEから独立した第三者の認証委員会が、申請プロジェクトのCO2吸収量を科学的データに基づき算定・審査し、クレジットを認証する仕組みである。この算定・審査プロセスは、MRV(測定・報告・検証)の考え方に基づいている。

永続性という認証要件

Jブルークレジット®が対象とするCO2吸収量は、国際的な標準に準拠し、100年以上にわたり沿岸域・海洋に安定的に貯留されることが要件とされている(樹木等の植物体に含まれる一時的なバイオマスは対象外)。これは、クレジットの永続性を担保するための重要な基準である。

認証対象となる生態系

主な対象は以下の通りである。

  • 藻場(コンブ、ワカメなど):光合成によってCO2を吸収・固定する海藻類。Jブルークレジット®の主要な対象である。
  • アマモ場(海草藻場):海中に根を張り、砂地の海底に草原のように広がる海草。
  • 干潟・塩性湿地:潮の満ち引きによって現れる、豊かな生態系を持つ沿岸域。

いずれも、森林や土壌を対象とする他の自然由来カーボンクレジットと同様、自然の力を活用してCO2を吸収・固定する点が共通している。

活用の目的

企業は自社のCSR活動の一環として、あるいは自主的なカーボンオフセットの手段としてJブルークレジット®を購入する。購入企業は、自社の気候変動対策への貢献に加え、「日本の豊かな海を守り、漁業コミュニティを支援している」という社会的意義を発信できる。

国内外の動向

Jブルークレジット®の認証実績は着実に拡大してきた。国土交通省港湾局の資料によれば、認証サイト数・認証量は2020年度の1サイト・約23トンCO2から、2022年度には21サイト・約3,730トンCO2まで増加している。その後も兵庫県神戸市や鳥取県など全国各地の藻場・干潟再生プロジェクトが認証されており、認証申請の手引きも継続的に改定が重ねられている。

海外に目を向けると、マングローブ林などを対象とした「ブルーカーボンクレジット」の国際的な枠組みも存在し、Jブルークレジット®は日本の地理的特性に合わせてこれを国内向けに独自発展させた制度と位置づけられる。クレジットを購入・活用する企業にとっては、供給プロジェクトの信頼性やクレジット品質を見極める視点も欠かせない。CDR PROでは、こうしたカーボンクレジットの品質評価を専門的な視点から支援している。

メリットと課題

メリット

本制度のメリットは、日本の沿岸生態系の特性に特化した独自のカーボンクレジットを創出できる点にある。気候変動対策と沿岸漁業の振興、地域活性化を直接的に結びつけることが可能であり、海洋保全に対する意識向上を促す効果も期待できる。

課題

一方で、課題も存在する。

科学的知見の蓄積:海藻によるCO2吸収・固定量の算定方法は研究段階の要素も含んでおり、方法論の継続的な高度化が求められる。

永続性の確保:再生した藻場が将来にわたって健全な状態を維持できるかという点において、100年単位の長期的なモニタリングと管理が必要不可欠である。

In English: What Are J-Blue Credits?

Japan is a maritime nation surrounded by the sea, and its coastal seaweed beds and seagrass meadows play a growing role in climate action.

J-Blue Credit® is a private-sector certification scheme that authenticates CO2 absorbed by Japan’s coastal blue carbon ecosystems and issues it as a tradable credit. The scheme is operated by the Japan Blue Economy Association (JBE), a general incorporated association. Because Japan has relatively few mangrove forests, J-Blue Credit uniquely focuses on kelp and seaweed beds (moba) as its primary certification target — distinguishing it from the government-run J-Credit Scheme, a separate and independent initiative.

JBE’s independent certification committee reviews and certifies each project’s CO2 absorption based on scientific data, following measurement-reporting-verification (MRV) principles. To qualify, absorbed CO2 must remain stably stored in coastal or marine environments for at least 100 years, in line with international permanence standards. Eligible ecosystems include seaweed beds, seagrass meadows, and tidal flats or salt marshes.

Certified sites and credit volumes have grown steadily — from a single site (about 23 t-CO2) in fiscal 2020 to 21 sites (about 3,730 t-CO2) by fiscal 2022, according to Japan’s Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism — with further projects certified since across the country.

Companies purchase J-Blue Credits as part of CSR activities or voluntary carbon offsetting, gaining both a climate contribution and a story of supporting Japan’s coastal fishing communities. Key challenges remain: the science behind seaweed carbon sequestration is still maturing, and long-term monitoring is essential to ensure the permanence of restored habitats.

まとめ

Jブルークレジット®は、日本の海洋生態系(ブルーカーボン)によるCO2吸収量を認証する国内の民間クレジットである。JBEが運営し、特に藻場を対象とすることで沿岸漁業の振興にも貢献する点が最大の特徴だ。

この制度は、グローバルな基準だけでは評価されにくい地域固有の自然の価値に着目し、それに経済的な価値を与える試みである。独自の海洋生態系を持つ島国や沿岸国にとって、気候変動対策と地域経済の活性化を両立させるモデルケースとなり得るものである。

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。