炭素ビジネス評議会(Carbon Business Council)が主導する「強化風化アライアンス(Enhanced Weathering Alliance、EWA)」は、炭素除去(CDR)の主要手段として注目される強化風化の拡大を目的に、連携活動を強化すると発表した。2024年に設立された同アライアンスは、農業インフラを活用できる新興CDR技術の商業化・政策推進を担う国際的連携体である。
EWAには、アルト・カーボン(Alt Carbon)、カーボンフューチャー(Carbonfuture)、カーボン・ドローダウン・イニシアティブ(Carbon Drawdown Initiative)、カーボニー(Carbony)、イオン(Eion)、フラックス(Flux)、インプラネット(InPlanet)、マティ(Mati)、ロック・フラワー・カンパニー(Rock Flour Company)、シリカ(Silica)、テラドット(Terradot)、アンドゥ(UNDO)、ゼロエックス(ZeroEx)など、強化風化(Enhanced Weathering、EW)分野を代表する企業が加盟し、非営利団体カスケード・クライメート(Cascade Climate)がオブザーバーとして参加している。これらの組織が協働し、EWを「気候関連スケール」まで引き上げる取り組みを推進する。
炭素ビジネス評議会の事務局長であり『カーボン・ヘラルド』発行人でもあるベン・ルービン氏は、「強化風化は大きな気候便益をもたらし、農業者に実質的な価値を生む可能性がある」と述べ、「科学的整合性、透明性、分野横断的な連携のもとで、この炭素除去手法を健全に拡大していく」と強調した。
強化風化とは、粉砕した鉱物を土壌に散布し、自然界の鉱物風化作用を加速させることで大気中のCO2を吸収・固定するプロセスである。既存の農業機械やサプライチェーンを利用できることから、急速な拡大が見込める上、土壌や水質の改善、作物収量の向上など複合的な環境便益も期待されている。
EWAは今月、欧州委員会の「炭素除去認証枠組み(Carbon Removal Certification Framework、CRCF)」に関するワークショップで政策提言書を公表した。バンク・オブ・バークレイズやマイクロソフトなどの大手企業も同分野への投資を表明しており、強化風化市場の形成に向けた関心が高まっている。
同アライアンスは今後、政策提言活動の強化、信頼性の高いカーボンクレジット市場の整備、そしてステークホルダー教育を柱に据える。とりわけ、CRCFへの正式認定を通じて、品質が検証されたEWクレジットを企業バイヤーに透明な経路で届ける市場構築を目指す。
イオンの共同創業者アダム・ウルフ氏は、「航空燃料や農業など規制の厳しい業界横断的な連携と、明確な政策枠組みが不可欠だ。アライアンスを通じてその基盤を築いていく」と述べた。インプラネットCEOのフェリックス・ハルテネック氏も、「ギガトンスケールのCO2除去と農業の回復力向上の両立には、産官学の協働が欠かせない」と指摘した。
さらに、テラドットのジェームズ・カノフCEOは「単独企業では拡大できない。科学・政策・現場を統合するこの枠組みが、信頼される気候解決策への鍵になる」と強調した。
EWAは、炭素ビジネス評議会が推進する「陸・空・岩・水」の4領域からなるCDR拡大構想の一環として位置づけられている。それぞれの分野で連携を深め、全体として統合的な炭素除去エコシステムを構築する狙いだ。
参考:https://www.carbonbusinesscouncil.org/news/ewalliance-2025
 
							 
			 
		 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				