マイクロソフト(Microsoft)がノルウェー最大の廃棄物発電所で進むCCS(炭素回収・貯留)プロジェクトから、10年間で110万トンのカーボンクレジットを購入する契約を締結した。
ノルウェーの電力・熱供給事業者Hafslund Celsio(ハフスルンド・セルシオ)は6月30日、オスロのKlemetsrud廃棄物発電所で進めるCCSプロジェクトから、米マイクロソフトが10年間で110万トンのカーボンクレジット(除去系クレジット)を購入する契約を発表した。取引額は非公表だが、1ドル=160円換算で数十億円規模とみられる。
同発電所は年間約35万トンの廃棄物を焼却し、廃熱をオスロ市の地域暖房と発電に活用している。焼却過程で排出されるCO2のうち、約半分は食品残渣・紙類などの生物由来(バイオジェニック)で、残りはプラスチックなど化石由来だ。今回のCCSプロジェクトにより、2029年から年間約35万トンのCO2を回収し、ノルウェー西海岸からNorthern Lights(ノーザンライツ)プロジェクトの海底貯留施設に輸送・恒久貯留する計画だ。
バイオジェニック由来分のみがカーボンクレジット化されるが、化石由来分についてもオスロ市の年間化石CO2排出量を20%削減する効果が見込まれる。
Hafslund CelsioのCEO、マーティン・S・ルンドビー氏は「マイクロソフトとの契約は当社のCCSプロジェクトの商業的成功に大きく貢献する。廃棄物発電が永久的なCO2除去の有力な供給源であることを示す取引だ」と述べた。
同プロジェクトはノルウェー政府が主導するLongship(ロングシップ)フルスケールCCSプロジェクトの一環であり、欧州に約500カ所ある他の廃棄物発電所にも適用可能なモデル構築を目指す。すでにオスロ市は2024年10月に財政負担を承認、ノルウェー議会は2024年12月に補助金契約を可決し、2025年1月に最終投資決定が下されている。
マイクロソフトは世界最大規模のカーボンクレジット購入企業として、今回の契約を含め過去1週間で数百万トン規模のCDR契約を複数発表しており、2050年の排出削減およびカーボンネガティブ目標達成へ向けて取り組みを加速している。
マイクロソフトのEnergy & Carbon Removal担当シニアディレクター、Brian Marrs(ブライアン・マーズ)氏は「Hafslund Celsioのプロジェクトは廃棄物を価値あるCO2除去源に変えると同時に、オスロの暖房供給とノルウェーの気候目標達成を支援する。ロングシップにおける中核的役割を高く評価している」と述べている。
同プロジェクトは、廃棄物発電による社会課題の解決(非リサイクル廃棄物処理・地域暖房提供)と同時にバイオジェニックCO2の大規模な恒久除去を実現する「完全閉ループ型CCS」と位置付けられ、CDR市場形成における欧州の制度設計にも影響を与える可能性がある。