炭素除去スタートアップのリワインド(Rewind)は10月28日、ジョージア西部トキブリ市で世界初となる商業規模の「深層炭素貯留(Deep Mine Storage、DMS)」プロジェクトを正式稼働させた。植物由来の炭素を酸素のない地下環境に封じ込め、分解を防ぐことで数千年単位で炭素を固定化するもので、炭素除去(CDR)の実装化に向けた新たな節目となる。
同社によると、既に二酸化炭素換算で400トンを地下約1.3キロメートルに貯留しており、2027年までに年間5万トン規模への拡大を見込む。初の認証付きカーボンクレジットは2026年初頭に発行予定で、低コストかつ恒久的な炭素貯留モデルとして注目されている。
植物炭素を「地球の仕組み」で封じ込める
リワインドの手法は「嫌気性バイオマス貯留(anoxic biomass storage)」と呼ばれ、植物が光合成で吸収したCO2を分解前に地下に閉じ込める。木材加工時に発生するおがくずなどの余剰バイオマスをスラリー状にし、密閉した坑道内に注入・封鎖することで酸素との接触を断ち、分解を防止する。
この過程は、酸素の乏しい環境で有機物が長期保存されている黒海海底の自然現象を人工的に再現したものだ。リワインドは既存の鉱山インフラを再利用することで、エネルギー消費と設備投資を最小限に抑えつつ、地質学的な恒久性を実現している。
同社は「深層炭素貯留(DMS)は概念ではなく、すでに稼働し、検証可能で、拡大可能な技術だ」とラム・アマール最高経営責任者(CEO)は述べた。
地域経済と公正な移行も支援
DMSジョージアは環境効果に加え、地域経済にも波及効果をもたらしている。操業・輸送・現場管理で数十人の雇用を創出し、運営支出の約7割を国内調達としている。2027年までに同プロジェクトがジョージアのGDPに数百万ドル(約数億円)規模で寄与する見通しだ。
プロジェクトの運用は、同社独自のデジタル測定・報告・検証(dMRV)システムで管理されており、バイオマスの調達から地下封入までの全工程が第三者認証可能な形で追跡される。
2030年に年100万トン除去へ 「自然に学ぶ」炭素除去の新基準
リワインドは今後、世界各地の鉱山跡や採石場、堆積層を活用し、2030年までに年間100万トンのCO2を除去するネットワーク構築を目指す。黒海や河川・港湾の堆積層を利用した新規プロジェクトも進行中だ。
同社は、既存インフラと自然のメカニズムを活かした「地球と共に働く」炭素除去モデルとして、DMSが将来のCDR市場の標準技術になることを狙う。
参考:https://www.rewind.earth/post/dms-georgia-worlds-first-deep-mine-carbon-storage