7月2日、アイスランド拠点の直接空気回収(DAC)大手Climeworks(クライムワークス)は、新たに1億6,200万ドル(約260億円)を調達したと発表した。これにより累計調達額は10億ドル(約1,600億円)を突破し、2025年の炭素除去(CDR)投資としては世界最大規模となった。調達資金はDAC技術のコスト削減とスケール化、カーボンクレジット供給力の拡充に充てられる。
今回の調達はBigPoint Holding(ビッグポイント・ホールディング)とPartners Group(パートナーズ・グループ)が主導し、既存投資家も参加した。Climeworksは「投資家がカーボンリムーバルを不可逆的な市場と認識し、強い確信を示した」と述べた。
同社は2021年にアイスランドで世界初の商業DACプラント「Orca(オルカ)」を稼働させ、2024年には大型化した「Mammoth(マモス)」で運用を開始。これまでに第三世代DAC技術でエネルギー効率を2倍、スループット向上、フィルター素材の長寿命化を実現し、世界初の採算性を持つDACプラント実現に近づいている。
Climeworksは「DACは実験から必須技術となりつつある」と強調し、今回の資金でDAC除去単価の引き下げと技術革新を進める方針だ。さらに短期・長期の需要に対応するカーボンクレジットポートフォリオを拡充し、既に600万t-CO2超のカーボンクレジット供給枠を確保。
ただし、同社は成長の裏で揺れも経験している。2025年5月には業界の動揺を背景に人員削減を検討していることが報じられ、技術面でも回収と貯留の実態について批判があがっていた。
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また米国ルイジアナ州で計画中のDAC+S(Direct Air Capture and Storage)大型施設「Project Cypress(プロジェクト・サイプレス)」が連邦予算削減の対象となる可能性も一時浮上したが、米ホワイトハウスは既承認プロジェクトへの影響はないと表明し、不安を払拭した。
共同CEOのクリストフ・ゲバルド氏は「今回の調達により累計10億ドル超を達成できたことは、CDRが現実であり、必要不可欠で、今後も継続する市場であることを示している」と強調した。
Climeworksは今後、DAC技術の革新と価格低減を進めつつ、短期のキャッシュフローを確保しながら長期需要を醸成するハイブリッド型ビジネスモデルを軸に、企業の脱炭素投資の受け皿として市場を拡大する考えだ。
参考:https://climeworks.com/press-release/climeworks-raises-usd-162m-to-scale-up-technology