Danube CCS VenturesがEUの国家補助承認に法的異議。スウェーデンのBECCS支援スキームに新たな火種
2025年4月22日、ハンガリーのDanube CCS Ventures社が、スウェーデンにおけるBECCS(バイオエネルギー由来のCO2回収・貯留)事業への国家補助金制度に対し、欧州委員会の承認判断を不服として欧州司法裁判所に提訴したことが、EU官報(Official Journal of the European Union)にて公示された。
スウェーデンの支援スキームとは?
提訴の対象となっているのは、スウェーデン政府が推進するBECCS国家支援制度。その象徴ともいえる「Beccs Stockholmプロジェクト」などがすでに資金支援を受けており、カーボンネガティブな削減成果(negative emissions)を国家目標に反映させることが期待されている。
このスキームは、欧州委員会によって国家補助金規制に準拠するとして正式に承認されていたが、Danube社はこの承認の法的正当性に異を唱えている。
今回の訴訟のポイント
現在公表されているのは提訴の概要のみで、法的・事実的な根拠の詳細は明らかにされていない。ただし、EU競争法の観点からは、補助金の公正性や市場歪曲性(distortion of competition)が争点となる可能性が高い。
なお、今回の提訴はEUの承認を一時停止させる効果を持たず、スウェーデンの補助金制度自体は継続中。ただし、将来的に判決の影響が広がる可能性は否定できない。
スウェーデンは、2050年カーボンニュートラル達成のため、年間800万トンのネガティブエミッションの創出を目指す国家戦略を掲げている。これに対し、バイオマス燃焼由来のCO2を地中に封じ込めるBECCS技術は、その中核を担うと見なされており、EUのグリーン・ディールとも整合的な気候解決策とされている。
しかし、国家間での補助金競争や技術的偏重への懸念は根強く、今回の訴訟は「BECCS偏重」による市場不均衡や排他性の問題提起と捉えられる側面もある。
判決の行方次第では、EU域内の他国も同様の支援制度を見直すきっかけになるかもしれない。今後の訴訟展開は、EU域内の炭素除去政策の透明性と整合性を問う試金石となりそうだ。
参照:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A62025TN0153&qid=1745306574196