世界初「海水淡水化×CDR」実証 イスラエルでCarbonBlueが運転開始

村山 大翔

村山 大翔

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気候テック企業CarbonBlue(カーボンブルー)は5月末、イスラエルのマアガン・ミカエル海水淡水化施設で、運転中の淡水化プラントに直接組み込む形での水系CDR(炭素除去)実証「Midway(ミッドウェイ)」の運転を開始した。同社はこれを「世界初の試み」と位置づけており、既存インフラに統合可能なCDR技術の実証として注目される。

Midwayは、海水取水時に含まれる二酸化炭素(CO2)を緑色水酸化石灰で反応させ、炭酸カルシウムの粒子として回収する仕組みを採用する。固形化したCO2は水から分離・回収され、残る脱炭酸水は原水に戻されることで再度大気中のCO2を吸収可能となり、カーボンクレジットの創出にもつながると同社は説明する。

運転開始段階(フェーズ1)では毎時15立方メートルの水処理能力で、年間40トンCO2の除去を計画。次段階(フェーズ2)では処理能力を毎時150立方メートルへ拡大し、年間400トンCO2の除去を目指す。除去効率は90%に達し、同時に淡水回収量を年間最大5.2メガリットル、将来的には52メガリットルへ引き上げる効果も見込む。

淡水化プラント側にもメリットがある。Midwayの運用により、膜の保守コスト削減や運転コストの低下、高純度の炭酸カルシウム副産物の生成など、産業的コベネフィットが得られるという。

CarbonBlueは2025年3月に1,000万ドル(約16億円)のシード資金調達を完了済み。今後はイスラエル以外での商用展開も視野に入れ、淡水化プラントや工業用水処理インフラとの連携を通じてスケーラブルなカーボンクレジット創出モデルの確立を目指す。

Midwayの商用化・拡大計画は、世界各地で進むブルーカーボン連動型CDR市場の成長とも連動する。今後、2025年内に次段階の稼働規模とクレジット発行方針を発表する見通しだ。

参考:https://carbonblue.cc/newsroom/#media