米国で「アメリカ版CBAM」法案提出、輸入品に最大200%の炭素課金

村山 大翔

村山 大翔

「米国で「アメリカ版CBAM」法案提出、輸入品に最大200%の炭素課金」のアイキャッチ画像

カーボンリムーバルによる軽減措置を明記、国際貿易と排出規制の交差点に注目集まる

米上院議員ビル・キャシディ氏(共和党・ルイジアナ州)とリンジー・グラハム氏(同・サウスカロライナ州)は11日、炭素集約型の輸入品に課金を行う新法案「外国汚染課金法案(Foreign Pollution Fee Act of 2025)」を提出した。本法案は、米国基準と比較してGHG排出量が高い国からの輸入品に最大200%の炭素料金を課す内容で、中国、ロシア、インド、台湾などが影響を受けるとみられる。

対象品目は、鉄鋼、アルミニウム、肥料、ガラスなどの炭素集約型製品であり、米国内産業の競争力保護と環境規制の公平化が目的とされている。草案によれば、米企業は厳しい環境基準により年間4,000億ドル以上のコストを負担しているとされ、それに見合う調整が必要との声が背景にある。

カーボンリムーバルが「課金軽減手段」に明記

注目すべきは、炭素除去(CDR)や炭素回収(CCS)を通じた課金軽減措置が明文化されている点だ。企業は、製造拠点で直接CO2を回収するか、耐久性のある炭素除去クレジットを購入することで課金を抑えることが可能になる。これは、DACや海洋炭素除去(mCDR)などの技術の商用化を後押しに繋がる。

ただし、森林由来のオフセットは「一時的」と見なされ評価が低く、対象となるCDRは米国または「承認されたパートナー国」に限定される。中国など「懸念される外国主体」のプロジェクトは排除対象となる。

炭素税ではなく排出ベースの「料金モデル」へ移行か

本法案は、かつての税額控除(炭素貯留に対する優遇策)に代わる市場メカニズムとしても注目されている。一方、EU CBAMと類似する構造を持つため、グローバル貿易の炭素課金時代への布石ともいえる。

米国内外への影響と今後の展望

法案はまだ審議段階だが、成立すれば途上国を含む全世界の製造業に脱炭素投資を促す圧力となり得る。一部の国には猶予期間が設けられる予定だが、中国・ロシアなどには即時適用される見込みで、外交・貿易交渉にも影響が波及する可能性がある。

関税戦争の裏で、静かにCBAM戦争が動き始めている。

参照:https://www.cassidy.senate.gov/wp-content/uploads/2025/04/FPFA-2025.pdf