米グーグル(Google)は10月23日、炭素回収・貯留(CCS)技術を導入した天然ガス火力発電所から電力を購入する、米国初の企業間電力購入契約(PPA)を締結したと発表した。対象となるのはイリノイ州ディケーターに建設予定の「ブロードウィング・エナジー(Broadwing Energy)」発電所で、運転開始は2030年初頭を予定する。出力は約400メガワットで、生成電力の大部分をグーグルが購入し、中西部のデータセンター群に供給する計画だ。
同発電所は、CO2排出量の約90%を地下に永久貯留する。貯留場所は、農業・食品大手アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(Archer Daniels Midland、ADM)が所有する米環境保護庁(EPA)認可の地層貯留施設で、地表から約1.6キロメートル(1マイル)下に位置する。ADMは既にエタノール生産に伴うCO2を10年以上安全に貯留しており、その知見が今回のCCSプロジェクトにも活用される。
グーグルは発表で「AIの責任ある発展には膨大な電力供給が必要であり、クリーンで安定した電源の確保が不可欠だ」と強調した。AIモデルのトレーニングやデータセンターの稼働に伴う電力需要増大を背景に、同社は再生可能エネルギーだけでなく「脱炭素化された火力電源」の導入も模索している。
今回のブロードウィング計画は、インフラ投資会社アイ・スクエアード・キャピタル(I Squared Capital)の傘下でCCS開発を手がけるロー・カーボン・インフラストラクチャー(Low Carbon Infrastructure、LCI)との長期的協業の第1号案件となる。両社は今後、米国内で同様のCCS発電事業を商業規模で展開する方針だ。
LCIによれば、建設段階で約750人の雇用を創出し、稼働後も数十人の常勤職を確保する見通し。また、発電所の運営を通じて地域経済への波及効果も期待されるという。
さらに、このプロジェクトでは「CCS特化型エネルギー属性証書(EAC)」の新標準を採用し、排出削減量の算定と報告の透明性を確保する。これは、今後のカーボンクレジット市場でCCS由来の削減分を正確に評価する上で重要な取り組みとなる。
国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、CCSを脱炭素化戦略の重要手段として位置づけており、発電や製鉄・セメント産業の排出削減に不可欠と指摘している。
グーグルは2024年時点でAI関連サービスを通じて年間約2,600万トンのCO2削減を支援しており、これは米国の約350万世帯の年間エネルギー使用量に相当する。同社は「CCSを含む新技術の導入を加速し、クリーンで信頼性の高い電力供給を世界に広げたい」と述べている。
参考:https://blog.google/outreach-initiatives/sustainability/first-carbon-capture-storage-project/