フランスの民事裁判所は10月23日、石油大手トタルエナジーズ(Total Energies)が自社広告で「2050年までにカーボンニュートラルを達成する」と宣伝した行為について、消費者を誤導したとして有罪判決を下したとロイター通信が報じた。環境NGOによる訴えを受けたもので、エネルギー企業を対象とした「グリーンウォッシング」法の適用は今回が初めてである。
カーボンニュートラル主張の削除命令 違反で1日最大2万ユーロの罰金
同裁判所はトタルエナジーズに対し、公式ウェブサイトから「カーボンニュートラル」や「エネルギー転換」に関する誤解を招く表現を削除し、判決文へのリンクを180日間掲示するよう命じた。命令に従わない場合、1日あたり最大2万ユーロ(約320万円)の罰金が科される。加えて、提訴した3団体それぞれに8,000ユーロ(約130万円)を支払うよう命じられた。
この訴訟は、2022年3月に環境団体グリーンピース・フランス、フレンズ・オブ・ジ・アース・フランス(地球の友)、および他1団体が起こしたもので、同社の2021年の広告キャンペーンを「虚偽の商業行為」として非難していた。広告では「社会とともに2050年までにネットゼロを達成する」と掲げ、ガスを「最も温室効果ガス排出の少ない化石燃料」と強調していた。
「世界初の有罪判決」 環境団体が歴史的勝利と評価
環境法に詳しい非営利団体クライアントアース(ClientEarth)は、「世界で初めて石油企業がグリーンウォッシングで有罪となった判決だ」として、「この判決は欧州および世界の石油・ガス企業に対する明確な警告だ」と声明を出した。
また、原告の一つであるグリーンピースは「気候変動との闘いにおける自社の貢献を偽って公衆を誤導したとして、大手石油企業が有罪となるのは世界初だ」と述べた。
一方、仏フレンズ・オブ・ジ・アースの活動家ジュリエット・ルノー氏は、「広告で掲げるクリーンエネルギーと実際の事業活動の間には大きな乖離がある」と指摘した。実際、トタルエナジーズは再生可能エネルギー投資を強調する一方で、石油・ガスの生産拡大を続けている。
欧州で広がる法的圧力 企業広告の透明性が焦点に
今回の判決は、企業の環境広告をめぐる欧州の規制強化の流れに拍車をかける可能性がある。欧州ではすでに、オランダのKLM(2024年)やドイツのルフトハンザ(2025年3月)が「環境配慮型航空」の誤解を招く表現で敗訴している。
一方で、EUレベルの包括的なグリーンウォッシング規制法は依然として交渉が難航している。
トタルエナジーズは今後1か月以内に問題広告を撤去する必要があり、同社のフランス国内の電力・ガス販売子会社にも同様の掲示義務が課された。判決は、化石燃料依存を続けながら「脱炭素」を標榜する企業の広報活動に対し、法的な責任を問う新たな先例となる。