村上市が「カーボンオフセット証明書」を手交 荒川区がJ-クレジット活用でCO2排出を相殺

村山 大翔

村山 大翔

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東京都荒川区は10月23日、新潟県村上市が発行する「豊かなさけの森林づくりクレジット」を購入し、公用車の使用によって発生した二酸化炭素(CO2)排出量212トン分をカーボンオフセットした。これを受け、村上市の高橋邦芳市長が荒川区役所を訪問し、滝口昌彦区長に「カーボンオフセット証明書」を手交した。

今回のオフセットは、村上市が森林整備を通じて創出した温室効果ガス吸収量を基にしたJ-クレジット(1トンあたり11,000円)を、荒川区が森林環境譲与税を財源として購入する形で実施されたもの。得られた収入は、村上市内の森林整備や脱炭素化のさらなる推進に充てられる。

森林吸収による地域間連携型のオフセット

村上市は、地域資源を活用して創出したカーボンクレジットを「豊かなさけの森林づくりクレジット」として販売している。同市の森林は、CO2の吸収源としての機能強化と、地域経済への還元を両立させる循環型モデルの一例とされる。今回の事例は、地方自治体間でのカーボンオフセット協働の先進的取り組みとして注目されている。

荒川区は、令和5年度の温室効果ガス排出量が13,192トンに上る。同区が策定した「荒川区役所エコアクティブプラン」では、令和12年度までに7,756トンまで削減する目標を掲げており、省エネ設備への更新や再生可能エネルギー導入と並び、カーボンオフセットの拡充も選択肢の一つとして位置づけている。

J-クレジット制度の意義と広がり

J-クレジット制度は、省エネや再生可能エネルギー導入、森林吸収などによる温室効果ガス削減・吸収量を国が認証し、クレジットとして取引可能にする仕組みである。クレジットの売却収益が次の環境投資に再投資されるため、環境保全と地域経済活性化の両立を目指す制度として注目されている。

J-クレジットの活用は企業だけでなく自治体にも広がりつつあり、今回のような地域間協働によるオフセット事例は、国全体の脱炭素政策の推進におけるモデルケースとなる可能性がある。

長年の交流から生まれた協働

荒川区と村上市の交流は、平成8年に村上市(当時・荒川町)が「川の手荒川まつり」に参加したことを契機に始まった。令和2年には「災害時における相互応援に関する協定」を締結し、令和5年度からは「鮭のまちで学ぶ森林・自然体験ツアー」を共同で実施するなど、環境・地域振興を軸に関係を深めている。

今回のカーボンオフセット事業は、こうした長年の信頼関係を背景にした自治体間連携の成果でもある。高橋市長は、「この取り組みが都市と地方の協働による脱炭素社会づくりの一助となることを期待している」と述べた。

参考:https://www.city.arakawa.tokyo.jp/a004/kouhou/houdou/20251023.html