VCMI、企業のScope3に対するカーボンクレジットの実践規範を正式発表

村山 大翔

村山 大翔

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企業のスコープ3排出ギャップを埋めるための新たな行動基準が始動

2025年4月30日、VCMIは、企業がスコープ3排出量に対する気候行動を継続的に進めるための新指針「Scope 3 Action Code of Practice(スコープ3アクション実践規範)」を発表した。
このコードは、国際商業会議所(ICC)やWe Mean Business Coalition環境防衛基金(EDF)世界経済フォーラム(WEF)など多数の組織が支持しており、英国、ペルー、パナマの政府からも歓迎の声明が出されている。

スコープ3排出ギャップへの対処とカーボンクレジットの役割

スコープ3排出量は、企業の排出量の70%以上を占めることが多いが、科学に基づく削減目標(SBT)の達成には依然として課題が多い。
現時点でのギャップは年間14億トンのCO2相当にのぼり、2030年までに70億トンへと拡大する恐れがある。

新たなコードはこのギャップに対し、以下の4つのステップを企業に求めている。

  1. 排出ギャップの明確化
  2. 直面している障壁の開示
  3. その障壁を乗り越えるための行動の公表
  4. 高品質なカーボンクレジットの活用

なお、カーボンクレジットの活用はあくまでも追加的手段とされ、直接削減の代替ではないことが強調されている。VCMIは、2040年までにすべての障壁を克服し、企業が削減目標に戻ることを求めている。

「スコープ3アクション・チャレンジ」も同時開始

今回の発表に合わせて、VCMIは「Scope 3 Action Challenge(スコープ3アクション・チャレンジ)」も開始。
国際商業会議所、The Nature Conservancy、We Mean Business Coalitionなどがパートナーとなり、企業と市民社会に対しスコープ3削減のステップアップを促す

チャレンジに参加する企業は、以下に同意する誓約文に署名する。

  • スコープ3排出ギャップの緊急性を認識する
  • 信頼できる全ての気候解決策を支持する
  • 気候戦略における透明性と説明責任を誓約する
  • 気候行動に取り組むリーダーの連携に参加する

グローバルな賛同と政策連携への広がり

本コードは、英政府のVCMに関する公開協議でも活用が検討されている。
Christiana Figueres(元UNFCCC事務局長)は、「高品質なカーボンクレジットは抜け道ではなく、変化のレバーである」と述べ、科学と誠実さに基づいたコードの重要性を強調した。同様に、ペルー、パナマ、シンガポールの政府高官も本コードに賛同し、企業による高信頼のクレジット活用と脱炭素加速の重要性を強調している。

今後の展望と実務影響

本コードは、企業の脱炭素戦略において以下のような新たなスタンダードを提示する。

  • 「削減できない」ではなく、「行動し続ける」ための設計
  • 信頼性のあるカーボンクレジット活用と透明性のある報告義務
  • 政策立案者や投資家の期待水準に対応可能な実務ツールの提供

日本企業にとっても、サプライチェーン全体のGHG排出対策強化と気候情報開示対応を進める上で、実効的な選択肢の一つとなるだろう。

参照:https://vcmintegrity.org/vcmi-launches-scope-3-action-code-of-practice/