米Salesforceは2025年度、Verra認証のREDD+プロジェクトから発行されたカーボンクレジットの引退量(リタイアメント)を前年比で約3割削減した。代わって、ODS破壊や埋立ガス管理、森林改善など他カテゴリのクレジット活用を強化しつつある。背景には、REDD+クレジットへの信頼性懸念と、透明性重視のポートフォリオ構築方針がある。
Salesforceの最新カーボンクレジットポートフォリオによると、2025年度に同社が使用したVerra認証のREDD+クレジットは「Manoa REDD+」(107,280t)のみで、前年度の「Katingan Peatland」(324,066t)や「Agrocortex」(59,425t)などを含む複数案件から大幅に縮小された。
同時に、同社はODS破壊(オゾン層破壊物質除去)や埋立ガス回収といった「即時性」「計測性」「追加性」の観点で信頼性が高いとされるクレジットにシフト。たとえば、2025年度には「Tradewater Thailand #5」(132,400t)や「Kayseri Molu Landfill」(120,000t)などのプロジェクトが主要な調達対象となった。
この動きは、REDD+クレジットへの国際的な精査強化や、炭素会計上の「実効性」に対する企業の意識変化を反映したものと考えられる。Salesforceは引き続き、第三者認証機関による検証付きクレジットのみに限定して調達を行っており、また「自然ポジティブ」と「ネガティブエミッション」の両立を中長期目標に掲げている。
特筆すべきは、REDD+の代替としてImproved Forest Management(IFM)やBlue Carbonなど、新たな自然系除去(NbS)分野もポートフォリオに含めている点である。たとえば、パキスタンの「Delta Blue Carbon-1」では75,000tの除去型クレジットを購入しており、信頼性と市場価値の両立を模索している。
企業による炭素クレジットの選別が高度化する中、日本企業にとっても、ポートフォリオの質的転換と第三者評価の重視は、信頼性ある気候コミットメントを担保する上で欠かせない戦略となりつつある。