欧州初となるCO2輸送専用船が、オランダ北部のRoyal Niestern Sander造船所で完成し、5月14日に進水式を迎える。デンマークのGreensandプロジェクトにおいて、同船は陸上のCO2回収地点から北海海底への恒久的貯留を担う要となる。
INEOS Energy EuropeとWagenborg Offshoreが主導する「Project Greensand」は、欧州初のフルスケールCCS(炭素回収・貯留)バリューチェーン構築を目指しており、その中心的役割を担うのが今回完成したCO2輸送専用船である。オランダ・Royal Niestern Sander造船所で建造された本船は、液化CO2の安全かつ効率的な海上輸送を実現する世界的にも先進的な仕様を備えている。
この船は、デンマーク北海のNini西プラットフォームを目的地とし、Esbjerg港から定期的に航行する。CO2は深さ1,800メートルの地層に恒久貯留される計画だ。Project Greensandの第一フェーズでは、年40万トンのCO2貯留を目指し、2030年には年800万トンへの拡大も見込まれている。
本船の建造は2024年11月、オランダ国王とデンマーク国王の立ち会いのもと契約が締結されたものであり、欧州気候政策における国家的関心の高さがうかがえる。INEOSのマッズ・ガーデCEOは「この船は、EU初のCO2貯留施設を実現するために不可欠」と述べ、北海地質の安全性と貯留能力への信頼を強調した。
Wagenborgのエドウィン・デ・フリース氏も「北オランダの海事産業がエネルギー移行に果たす役割を象徴する」と語るなど、地域経済への波及効果にも期待が寄せられている。
現在、艤装・試験・試運転を経て、2025年末からの本格的なCO2海上輸送と注入開始が予定されており、同船の進水は欧州のCCSインフラ整備にとって大きな転換点となる。