コロラド州最高裁、気候変動でエネルギー企業を提訴する道を開く

村山 大翔

村山 大翔

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地方自治体が企業の責任追及へ前進、全米の訴訟に影響も

2025年5月13日、コロラド州最高裁は、ボルダー郡とボルダー市がExxon MobilとSuncor Energyを相手取り起こした気候変動訴訟を棄却すべきとする石油企業側の主張を退け、訴訟継続を認める歴史的判断を下した。この判決により、地方自治体が州法に基づき企業の気候変動責任を追及する訴訟が、実質的に進行可能となった。

裁判の背景、地域社会の「気候コスト」と責任の所在

この訴訟は、2018年にボルダー市・郡およびサンミゲル郡が提起したもので、長年にわたって気候変動の危険性を軽視・隠蔽してきた石油大手の行動により、地域が被る損害への補償を求めている。洪水、干ばつ、山火事といった気候災害に直面する中、数億ドル規模の対応費用が地元住民の税負担となることを回避すべく、責任の所在を企業に問う構図だ。

企業側は、気候変動は全地球的問題であり、連邦法が優先されるべきだと主張していた。しかし、コロラド州最高裁は5対2で「州法は妨げられない」と判断。連邦法による差し止めの主張を退け、「これは地元で起きている被害に対する補償請求であり、州の裁量の範囲にある」と明示した。

「法の下での公平」へ一歩前進

ボルダー市のブロケット市長は「企業は公衆を誤導し、責任から逃れることはできない」とコメント。訴訟を支援するEarthRights Internationalの弁護士も「加害者はその被害のコストを支払うべきという基本的な法原則に立脚した判決だ」と述べている。

このような気候変動に関する責任追及型の訴訟は全米で増えており、今回の判断は、2023年にハワイ州最高裁がホノルル市の訴訟を支持した事例に続くものだ。他州の裁判所もこの判決を参考にし、今後の気候訴訟の流れに大きな影響を与えると見られる。

裁判の意味、気候正義と自治体の役割

この訴訟は、単なる損害賠償請求にとどまらず、自治体による「気候正義(climate justice)」の追求を象徴している。コロラド州は米国でも特に温暖化の進行が顕著な州であり、その対応には住民の生活と地域経済の持続可能性がかかっている。

今後は、デンバー地区裁判所にて本格的な審理が進む予定で、司法の場で気候変動の「責任の所在」が問われる歴史的な瞬間を迎えることになる。

参照:https://bouldercounty.gov/news/colorado-supreme-court-advances-historic-climate-accountability-case-against-exxonmobil-and-suncor/