BKVとCIPが775億円のCCUS戦略提携を発表

村山 大翔

村山 大翔

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北米における大規模カーボンマネジメント事業の加速へ

2025年5月、米国の天然ガス大手BKV CorporationとデンマークのCopenhagen Infrastructure Partners(CIP)は、総額775億円を投じたCCUS(カーボン回収・利用・貯留)共同事業の設立を発表した。BKVが51%、CIPが49%を出資するこの合弁会社は、全米規模でのカーボンマネジメントインフラの開発・展開を目的とする。

早期事業化と資本力の融合

この戦略提携では、BKVの既存案件「Barnett Zero」と「Eagle Ford」が中核資産として提供される。Barnett Zeroでは、すでに2023年11月から2024年中に20万トン超のCO2を地下貯留済み。Eagle Fordは、2026年前半のCO2注入開始を目指している。

日々の運営はBKVが担い、CIPは自身のエネルギートランジションファンドIから最大775億円を投資。BKVは新たなCCUS資産の追加や資本投入も継続する予定で、共同事業体としての成長が見込まれる。

民間主導で「低炭素経済」へのインフラを構築

今回のJVは、CCUS市場の商業化・拡大を目的とした戦略的提携であり、民間資本による気候変動対策の代表例とも言える。CCUSは、製造・発電・天然ガス分野において「削減しきれない排出」の緩和策として注目されており、今後の適用範囲の拡大が期待されている。

CIPのようなインフラ投資ファンドとの連携により、BKVは初期コストの重いCCUSプロジェクトに迅速かつ大規模に取り組むことが可能になる。これにより、単なる排出削減策ではなく、商業的に成立する脱炭素ソリューションとしてCCUSを位置づけようとする構想が浮かび上がる。

背景と今後の展望

この提携の背後には、BKVが掲げる「カーボンセクエストされた天然ガス製品」の商業化、及びCCUS事業の収益化への強い意欲がある。また、プロジェクトファイナンス面では、Jefferies LLCが財務アドバイザーを務め、BakerHostetlerが法務面を担当するなど、盤石な体制で臨んでいる。

今回の合弁によって創出されるCCUS資産群は、今後の炭素規制強化やカーボンプライシングの動向次第でさらなる価値を持つ可能性があり、「規制×技術×資本」の連携による低炭素経済の実装を象徴する取り組みとして注目される。

参照:https://www.bkv.com/news/bkv-and-copenhagen-infrastructure-partners-announce-strategic-carbon-capture-joint-venture-with-up-to-500-million-initial-investment