森林科学者チーム、森林カーボンクレジット制度の多くが「高品質なカーボンクレジット発行には不十分」との見解

村山 大翔

村山 大翔

「森林科学者チーム、森林カーボンクレジット制度の多くが「高品質なカーボンクレジット発行には不十分」との見解」のアイキャッチ画像

米国の環境NGO、CATF(クリーン・エア・タスクフォース)は、2025年5月15日、森林カーボンクレジット制度に関する大規模な調査とスコアカードを公表し、現行制度の多くが「高品質なカーボンクレジット発行には不十分」との見解を示した。調査は北米市場で使用されている20種類の森林カーボンプロトコルを対象に、先進的な森林科学者チームによって実施された。

報告書では、森林を活用したCO2隔離が気候変動対策として有効である一方で、現行のプロトコルには「永続性の不確実性」「追加性の欠如」「リーケージ(間接排出)管理の不備」「監視・検証の信頼性不足」といった深刻な課題があると指摘。特に、森林火災や害虫被害、土地利用転換のリスクに対して、場所に応じたデータを用いず一律な仮定に基づいている点が問題視された。

CATFのランドシステムプログラム・ディレクター、キャシー・ファロン氏は「連邦レベルの監視があれば理想だが、州やレジストリによるプロトコル改訂でも大幅な改善は可能だ」と述べ、企業側に対しても「高品質なクレジットの需要創出が鍵」と呼びかけた。

調査チームは、以下の点でプロトコルの改善が必要と提言している。

  • 独立機関が保守する最新の場所別データを活用し、隔離量の精度と信頼性を高める
  • 気候変動や経済圧力といった変化を考慮した長期的影響評価手法の導入
  • モニタリングやリスク評価の更新が即時可能な制度構造
  • 科学技術の進展に応じた透明性・検証基準の強化
  • 市場の利害相反を回避する構造的改革と非温室効果ガス的影響の考慮

森林カーボンクレジットは現在、世界のボランタリーカーボンクレジット市場の約40%を占めており、市場全体は2022年に20億ドルに達した。今後は、クレジット品質と市場制度次第で1兆ドル規模に成長する可能性もあると予測されている。

CATFは、2024年のCOP29(アゼルバイジャン)で合意されたパリ協定第6条の国際カーボンクレジット取引枠組みにも触れ、「市場の信頼性を高めるには、質の高いプロトコルと厳格な監視体制が不可欠」と主張。今後も森林・バイオマス由来のカーボンリムーバルに特化した制度改革を支援していくとしている。

参考:https://www.catf.us/2025/05/new-study-scorecard-scientists-call-overhaul-forest-carbon-credit-protocols/