グーグル(Google)やストライプ(Stripe)、ショッピファイ(Shopify)が支援する「フロンティア(Frontier)」は、7月15日、二酸化炭素除去(CDR)を手がける米国・イタリア・カナダのスタートアップ3社から、計2,982トンのCO2除去由来のカーボンクレジットを事前購入した。支払額は175万ドル(約2億8,000万円)で、今回の契約は3社のうち2社にとって初の大口契約となる。
購入対象は「海洋アルカリ度増強(OAE)」と「表層鉱物化」という、CO2を海や鉱物で吸収・固定する技術。フロンティアは、こうした新技術の市場を育てるため、事前にCO2由来のカーボンクレジットを買い取る「前払い型支援」を続けている。
支援を受けた3社の技術内容は以下の通り。
カルボネティック(Karbonetiq/米国)
契約量:2,142トンCO2
鉄鋼やニッケル製造で出る「アルカリ性の工業廃棄物」を使い、大気中のCO2を自然に吸収させる。
さらに、これを独自のシステムで管理し、センサーとソフトで吸収量を計測。工場の敷地内で設置できるため、土地を大きく使わずに効率的なCO2除去が可能になる。
リメネット(Limenet/イタリア)
契約量:330トンCO2
「ゼロカーボンのクイックライム(水酸化カルシウム)」を電気炉で製造する。これを海や陸に撒くことでCO2を吸収する方法に使える。
通常のクイックライムは製造時に多くのCO2を出すが、リメネットの技術はその排出をなくす。将来的には、製鉄やセメントの脱炭素にも応用できる。
ファゾム(pHathom/カナダ)
契約量:510トンCO2
沿岸のバイオエネルギー発電所で出るCO2を、石灰石と海水、バイオ触媒を使った反応装置で「重炭酸塩」に変えて海に流す。
これにより、CO2を地中に埋めるのが難しい沿岸地域でも、海で安全に炭素を貯める新しい方法となる。
地球の気温上昇を止めるためには、2050年までに年間50億〜100億トンのCO2を大気から除去する必要があると言われている。しかし、現状では多くの技術がまだ小規模で、商業化はこれからだ。
海や鉱物を使うCDRは、その中でも特に有望とされているが、課題もある。フロンティアは、こうした技術の「初期のCO2除去量」を買い取ることで、事業化を後押ししている。
参考:https://frontierclimate.com/writing/summer-2025-prepurchases