ブラジル検察、アマゾン森林保全の280億円カーボンクレジット取引に異議 COP30開催州の信頼性に影響も  

村山 大翔

村山 大翔

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ブラジルの連邦検察庁は、アマゾン熱帯雨林の保全を目的とした1億8,000万ドル(約280億円)のカーボンクレジット取引の無効を求め、パラー州を提訴したと、6月4日複数のメディアが報じた。この取引は、Amazon.comを含む多国籍企業と米英政府などが参加するLEAF連合と昨年締結された。

検察は、先住民や伝統的コミュニティへの事前の説明や同意がなかったこと、ブラジル法が将来のカーボンクレジットの事前販売を禁じていることを理由に挙げている。この訴訟は、COP30の開催地であるパラー州政府と、信頼回復を目指すカーボンクレジット市場にとって大きな打撃となる可能性がある

パラー州とLEAF連合の取引内容

この取引は、2023年から2026年にかけてパラー州での森林伐採削減によって創出される最大1,200万トンのカーボンクレジットを、1トンあたり15ドルで販売するというもの。

購入者には、Amazon.com、Bayer、H&M、Walmart Foundationなどの企業と、米国、英国、ノルウェー政府が含まれる。取引は「ジュリスディクショナル型」と呼ばれ、州全体を対象とする新しい枠組みで、透明性と信頼性の向上が期待されていた。

法的・社会的な懸念

検察は、パラー州政府が先住民や伝統的コミュニティと十分な協議を行わず、彼らの権利を侵害したと主張している。また、契約が将来のカーボンクレジットの事前販売に該当し、2024年に施行されたブラジルの新しいカーボン市場法に違反するとしている。一部の先住民団体も、取引に関する情報提供や同意がなかったと批判している。

今後の展望

この訴訟は、2025年にCOP30を開催予定のパラー州にとって、国際的な信頼性や環境政策の透明性が問われる重要な局面となる。また、カーボンクレジット市場全体にとっても、法的な枠組みや社会的合意の重要性を再認識させる事例となる可能性がある。今後の裁判の行方と、関係者の対応が注目される。