オーストラリアカーボンクレジット制度で違反続出 70件が報告遅延 長期管理義務など対応急ぐ

村山 大翔

村山 大翔

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オーストラリアクリーンエナジーレギュレーター(CER)は、2025年4〜6月期のカーボンクレジット制度(ACCU)などのコンプライアンス状況を発表した。
発表によると、約3%にあたる70件の炭素除去プロジェクトが報告期限を過ぎており、このまま是正計画が提出されなければ、プロジェクトの認定が取り消される可能性がある。

ACCU制度は、植林や土壌炭素の蓄積などで炭素を減らした分をカーボンクレジット(ACCU)として発行する仕組みだ。日本のJ-クレジット制度と似ており、企業が排出量の相殺(オフセット)に使う。

今回の報告遅延は、制度の信頼性を損なう恐れがあるとして、CERは厳しく対応している。

また、土地の権利関係や利害関係者の同意についても注意喚起された。事業者は、プロジェクト期間中を通じて土地の権利を維持し、全ての利害関係者から同意を得る必要がある。これが守られなければ、カーボンクレジットは発行されない。

「ポストクレジット期間」の義務が本格スタート

今回はさらに、炭素隔離型プロジェクトの「ポストクレジット期間」の義務も本格的に始まった。これは、植林などの炭素除去事業がカーボンクレジット発行期間を終えた後も、25年または100年の間、5年ごとに報告を続ける義務だ。

もし義務を守らなければ、過去に発行したカーボンクレジットを返還(リクイディエーション)させられる場合がある。監視はリモートセンシングや監査で行われ、費用は事業者負担となることもある。

排出超過への対応も進む

同時に、温室効果ガス排出の報告・管理制度(NGERとセーフガードメカニズム)でも、大規模な排出超過が発覚した。

Fitzroy(CQ)社は、自社炭鉱と関連施設で約58万トンの排出超過があり、17万2,900トン分のカーボンクレジットを返還した。残りも12月15日までに返還する義務がある。

また、Beach Energy社には、過去の報告ミスを受けて3年間の外部監査とシステム改善を命じる措置が取られた。

再エネ制度でも不正多発 業者の資格停止や刑事罰も

再生可能エネルギー証書(STC)制度では、住宅用蓄電池の導入支援プログラムに伴い、設置状況の監査が始まった。不正があれば業者の資格取り消しとなる。

過去には、無資格で太陽光パネルを設置し、不正にSTCを申請した業者に対して刑事罰が科されている。2025年6月には、Craig Burmeister氏が有罪判決を受け、5,500豪ドル(約59万円)の罰金と200時間の社会奉仕を命じられた。

また、Tanway Engineering社は電気工事資格の不正で登録を永久停止され、南オーストラリア州では別の電気技師が62件の虚偽申告で3,500豪ドル(約38万円)の罰金を受けた。

豪州のカーボンクレジット制度は、長期間にわたる管理義務や排出超過時のクレジット返還を厳格に実施し、制度の信頼性維持に取り組んでいる。

参考:https://cer.gov.au/about-us/our-compliance-approach/compliance-and-enforcement-priorities/compliance-and-enforcement-priorities-2024-2025/compliance-update-april-to-june-2025