英ロンドン証券取引所上場の金融サービス会社TP ICAPグループは16日、仏政府が初めて認証した「地中海ブルーカーボンクレジット」の独占販売パートナーに指名されたと発表した。国連海洋会議(UNOC3)の場で仏ELYX財団が公開した本クレジットは、フランス地中海沿岸でポシドニア海草6,500ヘクタールを保全・再生することで創出された3万2,000トン分に相当する。初回購入者は仏外務省で、政府主導の気候金融モデルとなる。
仏生態移行・生物多様性・森林・海洋漁業省など公的機関が承認したブルーカーボンクレジットは欧州で初めて。発行主体のELYX財団は、船舶アンカーなどによる海草破壊を防ぎ、10年間で二酸化炭素吸収量を検証する手法を採用した。
ELYX財団は「科学的厳密性と地域経済への利益が両立する」と声明で強調した。TP ICAPのクライメート・インパクト部門責任者ピエール=アレクサンドル・ムーサ氏は「公共と金融が連携する新モデルだ」と述べ、国際機関や企業への二次販売を急ぐ構えだ。地中海の環境NGOは「資金循環を透明化すべき」と監視を求めている。
欧州委員会は2026年からブルーカーボン枠組みをEU炭素市場(ETS)へ段階的に組み込む方針を示す。民間主導の自発的市場(VCM)と規制市場の「橋渡し」が課題で、仏政府認証はその試金石と位置付けられる。TP ICAPは再生可能エネルギー証書やクレジット仲介を拡大しており、環境商品プラットフォーム強化を戦略の柱に据える。
ELYX財団は年内に追加で5万トン規模の第2弾クレジット発行を計画。EU委は25年12月までにブルーカーボンの統合指針案をまとめる予定で、価格形成と二重計上防止の仕組みが注目点となる。