国家気候変動事務局(NCCS)、通商産業省(MTI)、エンタープライズ・シンガポール(EnterpriseSG)は20日、企業の自主的な脱炭素計画でカーボンクレジットを用いる際の行動基準となる「ボランタリーカーボン市場(VCM)指針」の草案を発表した。シンガポール政府は7月20日までパブリックコメントを募集し、VCMの信頼性向上を図る。
草案は四つの柱で構成される。
- 高い環境整合性を求め、国際炭素クレジット(ICC)枠組みの7原則を準拠指標と位置付ける。
- パリ協定6条で政府間が採用する手法との整合を強調。
- あらゆる自社削減策を先に実行し、残余排出にのみカーボンクレジットを充当する。
- 企業の自主的コミットメントでは対応調整(CA)を不要と明確化し、ダブルカウント(二重計上)防止策を示す。
ガイダンスは、ICVCMの「コアカーボン原則」やCORSIA適格基準を参照し、市場標準のばらつきによる評判リスクを低減する狙いだ。シンガポール持続可能金融協会(SSFA)はクレーム指針コード策定を検討しており、ASEAN各国との連携で需要・供給シグナルの共通化を急ぐ。
政府は2024年にICC枠組みを導入し、排出量課税企業に課税排出量の5%までICCでのカーボンオフセットを認めた。今回の草案はその制度を企業全般にまで拡張し、ロンドン気候行動週間(6月24日)で発表予定の国際イニシアティブと接続させる。
7月20日の意見募集締切後、政府は年内に最終指針を公表する見通し。
企業側は2026会計年度から始まるISSB準拠の気候開示に備え、カーボンクレジット調達ポリシーとリスク管理策の整備が急務となる。