米マイクロソフト(Microsoft)は6月25日、カーボンクレジット開発企業アニュー・クライメート(Anew Climate)と森林所有・管理会社オーロラ・サステナブル・ランズ(Aurora Sustainable Lands)との間で、今後10年間にわたり自然由来のCDRクレジット(カーボンクレジット)480万トンCO分を取得する契約を締結した。対象は米東部5州42万5,000エーカー超の森林で、新世代の森林管理手法を用いたプロジェクトとしては国内最大規模となる。
アニューとオーロラが共同で開発・管理するこのプロジェクトは、ニューヨーク、バージニア、ウェストバージニア、ケンタッキー、フロリダの各州にまたがる多様な森林を対象とし、「改良型森林管理(IFM)」手法を採用。新たに発表されたACR(American Carbon Registry)のプロトコル「IFM v2.1」に基づいてカーボンクレジットが発行される初の事例の一つとなる。
アニューの独自システム「Epoch Evaluation Platform」は、機械学習、高解像度衛星画像、ドローン測量、地上調査などを統合し、森林の炭素量を継続的に定量評価。IFM v2.1が要求する基準を上回る精度・透明性・信頼性を担保する。また、プロジェクトには永続的な森林利用契約と保全条項が設けられ、地域の林業経済にも投資と雇用をもたらす構造となっている。
アニューのCEOアンジェラ・シュワルツ氏は「この契約は自然由来カーボン除去における新たな標準を打ち立てるものであり、環境保全と技術的厳格性を両立させた」と述べた。
オーロラのCEOジェイミー・ヒューストン氏は「当社は土地の所有者として、森林の管理からカーボンクレジットの発行まで一貫して担う。高品質・高信頼性のクレジット提供が可能だ」と強調した。
マイクロソフトのエネルギー・カーボン除去担当ディレクター、ブライアン・マーズ氏は「我々の『2030年までにカーボンネガティブ』という目標達成に向け、高透明性かつ高信頼性の自然由来除去は不可欠。今回の契約はその具体化だ」と語った。
カーボンクレジットの納入は2025年から始まり、質・量ともに市場での即効性が期待される。IFMプロトコルの刷新を受け、今後の森林由来カーボンクレジットの在り方に影響を与える可能性がある。