燃料電池とCO2回収を統合したゼロエミッションクルーズ構想「Swap2Zero」発表 

村山 大翔

村山 大翔

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フランスの高級クルーズ会社ポナン(Ponant)は、次世代船「Swap2Zero」を発表した。燃料電池、船上CO2回収、風力補助推進を組み合わせることで、実質ゼロ排出を目指す世界初の遠洋クルーズ船である。欧州委員会のイノベーション基金(INNOVFUND)および「フランス2030」計画の支援を受け、2030年の就航を予定している。

このプロジェクトは、欧州連合(EU)排出量取引制度(EU ETS)の収益を原資とするINNOVFUNDからの助成に選定された。ポナンのパトリック・オジエ総務責任者は「この助成は、フランス技術を結集したゼロエミッション船の実現に向けた挑戦を後押しする」と述べた。また、フランス政府と公的投資銀行BPIフランスも支援を表明しており、国内産業の脱炭素化を促す国家戦略「Green Ship」ロードマップの一環として進められている。

「Swap2Zero」は6つの先端技術を統合する独自のエネルギー設計を採用する。

  1. 風力を活用した帆走システムと低抵抗船体設計により推進エネルギーの約50%を供給。
  2. 船体上に1,000平方メートル超の太陽光パネルを搭載し、電力を補完。
  3. 液体水素を燃料とする低温型燃料電池で推進力を得て、水と熱を再利用。
  4. 高温型燃料電池が船内電力(ホテル負荷)を供給し、排熱を温水に再利用。
  5. 高温燃料電池に連動する船上CO2回収システムを搭載。
  6. 発電機を使わず電力を制御・分配する独自のエネルギーマネジメントシステム。

これらの統合により、運航時のCO2排出をゼロに近づけ、約1か月の自律航行を可能にするという。

ポナンの研究開発責任者マチュー・プティトー氏は「本プロジェクトは海運脱炭素化の転換点となる」と強調。燃料電池の開発を担うブルーム・エナジー(Bloom Energy)のアマン・ジョシ最高商務責任者も、「革新と協働が持続可能な海上旅行を変革する」と述べた。

国際海事機関(IMO)が掲げる2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ目標と整合し、クルーズ産業における低炭素化の新たな指標となる。フランス海事産業は官民共同で低炭素技術を推進しており、今回の助成はその国際的存在感をさらに強めるものといえる。

参考:https://www.calameo.com/read/000132423a81c1cf81aaa