日本GX総合研究所は10月21日、再生パソコン「ZERO PC」を展開するピープルポートと協業し、パソコン回収サービスによる温室効果ガス(GHG)削減貢献量の定量評価を開始した。国際標準(ISO 14040/14044)に基づくライフサイクルアセスメント(LCA)手法で削減効果を算定し、企業の脱炭素経営やGX推進を後押しする狙いだ。
企業におけるGHG排出量の把握、とりわけScope3の削減は、脱炭素経営の中核課題となっている。IT機器は製造段階で多くのエネルギーを消費するため、製品調達や廃棄の段階で環境負荷を下げることが重要視されている。
ピープルポートは2017年の創業以来、使用済みパソコンを回収・再生する「ZERO PC」事業を展開し、累計約19トンの電子ごみ削減に寄与してきた。再利用可能部品の活用や再生可能エネルギー電力による製造を特徴とし、「環境負荷ゼロ・難民ゼロ」を理念に掲げる。
今回の協業では、日本GX総研がLCA手法に基づき、廃棄処理と再生利用のGHG排出量を比較して削減貢献量を算定する。算出データはピープルポートを通じて回収サービス導入企業に提供され、ESG報告書や温室効果ガス排出インベントリへの活用が可能となる。従来は定量的に把握しにくかった「廃棄から再利用への切り替え効果」の可視化により、企業は脱炭素施策の成果を具体的に示せるようになる。
両社は今後、評価対象をパソコン以外のIT機器や製品にも拡大し、資源循環と脱炭素化を統合的に推進する「GXプラットフォーム」の構築を目指す。さらに、算定した削減貢献量を環境価値としてクレジット化し、企業間取引やオフセットへの展開も視野に入れる。
また、日本カーボンクレジット取引所との連携によるJ-クレジット活用キャンペーンも検討中で、個人参加者へのクレジット還元を通じて市民レベルでの資源循環促進を図る計画だ。
ピープルポートの青山明弘社長は「今回の協業により、再生パソコンによるCO₂削減効果を信頼性の高いデータとして示すことが可能になる。新品購入以外の選択肢を広げ、サステナブルな社会の実現に貢献したい」と述べた。
日本GX総研の鳥井要佑共同代表は「資源循環によるGHG削減はGX推進の中核テーマだ。LCA評価によって環境価値を定量化することは社会的意義が大きい」と強調した。
さらに、日本GXグループの細目圭佑共同代表は「ピープルポートは廃棄(Scope3カテゴリ12)の課題に真正面から取り組み、資源循環と社会的価値創出を両立している。今回の協業が持続可能な調達と廃棄の加速につながる」と述べた。
日本GX総研は2025年2月に設立された日本GXグループの子会社で、カーボンクレジット流通やGXコンサルティング、グリーンIT事業を展開している。今回の取り組みは、LCA評価を通じて循環型社会の形成とGX推進を結びつける実証事例となる。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000161269.html