タイ発 マヒドン大学、ZERO13、Uniqueが連携 「透明なカーボンクレジット市場」構築へ協定締結

村山 大翔

村山 大翔

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タイ・バンコクのマヒドン大学工学部は10月16日、カーボンクレジットおよびグリーン資産のデジタル取引基盤を提供する英ゼロサーティーン(ZERO13)、ならびに高品質カーボンクレジット開発を手がけるユニーク・トランスフォーメーション(Unique Transformation Co., Ltd.)と、カーボンクレジット市場の発展を目的とした三者間覚書(MoU)を締結した。協定は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)下でのタイの温室効果ガス削減目標達成を後押しし、教育・研究・技術・市場アクセスの各分野を強化する狙いがある。

マヒドン大学工学部のタナパット・ワニチャノン准教授(学部長)は「学術知見、技術革新、市場のつながりを融合し、公正で透明なカーボンクレジットエコシステムの基盤を築く重要な一歩だ」と述べた。

ZERO13のヒランダー・ミスラ会長兼最高経営責任者(CEO)は「デジタル炭素市場と国際投資へのアクセスを提供することで、タイの持続可能性リーダーシップを支援できることを誇りに思う」と強調した。

ユニーク社のタクサポン・トンディー取締役社長も「大小さまざまなタイ企業が、実効性のある環境・経済的インパクトを生むグリーンプロジェクトに参画できるよう支援する」と語った。

覚書に基づく連携は今後5年間にわたり、共同研究や研修プログラム、パイロットプロジェクトを推進する。半年ごとに進捗評価を行い、政策・実務の両面で成果を確認する仕組みだ。

協力の重点分野は、研究開発による政策立案支援、一般・企業向けの研修や啓発活動、エネルギー・交通・廃棄物管理・農業など多分野を網羅した市場構築、政府・企業・国際機関を結ぶネットワーク形成、の4本柱である。

ZERO13は、ブロックチェーンを活用してグリーンウォッシングやクレジットの二重計上を防ぐ仕組みを提供し、リアルタイムでの価格透明性を実現する。同社は、国際取引所セクデックスグループ(SECDEX)を傘下に持ち、カーボンクレジットやグリーン価値(RWA)のトークン化取引を可能にしている。

同社はこれまでに「ワールド・ベストESG取引所」(ユーロマネー・キャピタルマーケット・アワード2025)や「気候金融を拡大する最優秀ブロックチェーンソリューション」(COP28 UAE TechSprint 2023)などの国際的な評価を受けている。

マヒドン大学は1888年創設の国立研究大学で、医療・工学の両分野で高い評価を得ている。同大学は「カーボンフットプリント算定制度」を導入し、組織全体の温室効果ガス排出を可視化。2030年までのネットゼロ達成を掲げ、エネルギー効率化や生態系回復に関する研究も推進している。

同国政府は、2050年までのカーボンニュートラル化、2065年までの実質ゼロ排出を目指す方針を掲げており、今回の連携はその中核を担う産学官協働モデルとして注目される。デジタル技術を基盤とする透明なクレジット取引制度の確立により、タイ発の高信頼クレジットが国際市場で評価されることが期待される。

参考:https://zero13.net/mahidol-university-zero13-and-unique-transformation-join-forces-to-drive-thailands-carbon-credit-ecosystem-for-global-sustainability/