ブラジル政府、「グローバル炭素市場統合構想」をCOP30で提案 自主参加型の「オープン連合」で脱炭素加速へ

村山 大翔

村山 大翔

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ブラジル政府は10月7日、11月に開催される第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)において、各国の炭素市場を結びつける新構想「オープン連合(Open Coalition for Carbon Market Integration)」を提案した。財務省が主導するこの取り組みは、既存のカーボンクレジット取引制度を相互接続し、国際的な流動性・予測可能性・透明性の向上を狙う。ブラジル政府の「エコロジカル変革計画(New Brazil – Ecological Transformation Plan)」の中核をなす政策であり、経済成長と社会包摂、環境保全の三立を目指す。

提案の特徴は、参加が完全に自主的であり、希望する国のみが加盟できる点にある。連合は初期メンバー形成後も常時新規加盟を受け入れる「オープン構造」を維持する。

ブラジル財務省のサステナブル経済開発副長官クリスチーナ・ヘイス氏は、「この連合の目的は、各国経済の脱炭素化を加速し、パリ協定の実施を後押しすることにある」と述べ、「各国が協力することで、地球温暖化のリスクを大幅に減らすことができる」と強調した。

ヘイス氏はさらに、同構想は環境面にとどまらず、経済・社会を統合的に変革する枠組みであると指摘した。「脱炭素技術の導入やベストプラクティスの共有を促進し、低炭素製品を優先する新しい生産基準を打ち立てる。これにより、貿易・投資の競争力強化と雇用創出、不平等の是正が期待できる」と述べた。

COP30議長団の経済顧問委員を務める米マサチューセッツ工科大学(MIT)出身の経済学者キャサリン・ウルフラム博士は、開催国ブラジルが「グローバル炭素価格制度の実装に向けた実践的措置を推進する強力な立場にある」と評価した。

同氏は「炭素価格付けは脱炭素を促す主要な政策手段であり、企業・消費者・投資家が排出コストを意識した意思決定を行うよう導く」と述べた上で、「各国が協調することで、単独政策が生む貿易摩擦を抑え、途上国の参加を促すインセンティブを整えることが可能になる」と指摘した。

オープン連合のもう一つの柱は、加盟国間の所得再分配メカニズムである。各国の経済規模や排出構造の差異を踏まえ、脱炭素クォータの配分収益の一部を再循環させる「収益リサイクル」制度を導入する。これにより、気候対策のコストと利益を公平に分配し、国際的・国内的な格差是正を図る

ブラジルでは2024年12月に「排出取引制度法(法第15,042号)」が成立し、ブラジル排出取引制度(Sistema Brasileiro de Comércio de Emissões / SBCE)が創設された。これにより、温室効果ガス削減と低炭素技術開発を促進する国内炭素市場の法的枠組みが確立した。世界約80の国・地域で炭素価格制度が導入され、そのうち約40が取引市場を運用しているが、ブラジルの参入により国際市場との連携が一層進む見込みだ。

ヘイス氏は、「COP30は実施のためのCOPだ。金融セクターと財務当局が行動を起こすことが不可欠だ」と強調し、「炭素市場を通じてエネルギー・運輸などの大口排出企業に脱炭素を促すことが、公共財である気候や生活環境を守る鍵になる」と述べた。

参考:https://cop30.br/en/news-about-cop30/brazil-proposes-global-integration-of-carbon-markets-at-cop30#:~:text=In%20December%202024%2C%20Brazil%20passed,development%20of%20low%2Dcarbon%20technologies.