Gold Standard、「CORSIA」適格保険に新たに2商品を追加 民間保険によるカーボンクレジット保証を拡充

村山 大翔

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炭素クレジット認証機関のゴールド・スタンダード(Gold Standard)は、国際航空のための排出削減・オフセット制度「CORSIA」の第1フェーズ(2024〜2026年)における新たな適格保険商品として、英CFCアンダーライティング(CFC Underwriting)の「CORSIAギャランティ保険」と、米オカ(Oka, The Carbon Insurance Company)の「コレスポンディング・アジャストメント・プロテクト保険」を承認した。これにより、参加プロジェクト開発者が利用できるリスク管理ツールが拡大した。

この承認は、英リスク管理会社ハウデン(Howden)が2025年7月以降に実施している独立評価プロセスを経て行われたもので、ゴールド・スタンダードが定めるCORSIA適格基準に反映された。

ゴールド・スタンダードのマーガレット・キム最高経営責任者(CEO)は声明で「これらの保険商品を承認することで、プロジェクト開発者がCORSIA要件を満たすための選択肢が広がる。信頼性の高い形でCORSIA向けクレジット供給を拡大できる」と述べた。

CORSIAは、国際民間航空機関(ICAO)が2016年に創設した制度で、参加各国の航空会社に対し、2019年水準を超えるCO2排出分を適格カーボンクレジットで相殺することを義務付けている。制度の根幹となる要件の一つは、二重計上の回避であり、これは各国政府によるパリ協定第6条に基づく「対応調整(コレスポンディング・アジャストメント)」、もしくは承認保険に裏付けられた代替保証契約によって担保される。

今回の承認は、2024年12月に国際投資保証機関(MIGA)の契約違反保険が初めて認められて以来の追加となる。ハウデンは今後も新規保険商品の審査を継続する。

ハウデンのカーボン・アドバイザリー部門責任者チャーリー・プール氏は「これらの保険によって、CORSIA適格クレジットの発行が可能になり、航空分野における重要な炭素市場へのアクセスが開かれる。民間保険業界が高度なリスクを引き受け、移行ソリューション開発を促進していることは大きな前進だ」と述べた。

一方、業界内の主要プレイヤーである英キータ(Kita)は、CORSIA適格保険の初回審査への参加を見送った。同社CEOのナタリア・ドルフマン氏は「市場の成熟度が不十分で、リスク集約構造や保険契約者アクセスの制限に懸念がある」と説明し、「既存のノンデリバリー保険、政治リスク保険、不払い保険を通じ、高品質プロジェクトへの資金流入を支えることに注力する」と述べた。

ゴールド・スタンダードによる民間保険承認の枠組みは、炭素市場の信頼性向上とプロジェクト資金調達の安定化に資するものであり、今後CORSIA第2フェーズ(2027年以降)に向け、さらなる保険商品の認定が期待される。

参考:https://www.goldstandard.org/news/gold-standard-approves-more-insurance-policies-under-1st-phase-of-corsia