兼松とグリーンカーボン フィリピン初の「水田メタン削減JCM」実証開始 農業由来クレジット創出へ

村山 大翔

村山 大翔

「兼松とグリーンカーボン フィリピン初の「水田メタン削減JCM」実証開始 農業由来クレジット創出へ」のアイキャッチ画像

兼松とGreen Carbonは、フィリピン・北ミンダナオ地域のブキドノン州で、水田由来のメタン排出削減を目的とする共同技術検証を開始した。二国間クレジット制度(JCM)の方法論を活用し、2026年の本格事業化とカーボンクレジット発行を目指す。

本実証は、フィリピン政府と日本政府が2025年2月に承認した「間断かんがい(AWD)」による水田メタン削減の方法論を適用するもので、農業分野でのJCMクレジット創出としては世界初の試みとなる。初年度は約100ヘクタールの水田を対象に、3年間で5,000ヘクタール、10年間で3万ヘクタール規模への拡大を計画する。

兼松は、中期経営計画「integration 1.1」で掲げる「農業・食品GX」推進の一環として、Green Carbonと2024年5月に水田メタン抑制と環境配慮米普及に関する連携協定を締結。これまでベトナムなどで同様の取り組みを進めてきた。今回の実証は、同社にとって初の農業分野での民間主導JCMクレジット創出事業となる。

兼松はこれまで、バイオ炭や牛のメタン削減資材などを活用した「カーボンインセット」事業を展開してきた。今回の事業を通じて、エネルギー中心だったJCMの取り組みを農業分野にも拡大し、GXソリューションプロバイダーとしての事業領域を広げる構えだ。

フィリピンの温室効果ガス(GHG)排出量の約25%は農業分野に由来し、そのうち7割が水田からのメタンとされる。メタンはCO2の約28倍の温室効果を持つ強力な温室効果ガスであり、AWD技術を導入することで従来比約30%の削減が見込まれる。

現地パートナーのセントラル・ミンダナオ大学(Central Mindanao University)は、農学・生物学などの分野で国内有数の研究拠点を持ち、技術実証と地域展開を担う。プロジェクト対象地となるブキドノン州は水田面積約40,799ヘクタールを誇るフィリピン有数の農業地帯であり、水資源の確保と安定的な稲作生産に強みを持つ。

Green Carbonの大北潤代表取締役は、「地域農業の持続可能性を高めるモデルケースとして、農家の収益向上と水資源保全、そして安定的なクレジット供給を両立させたい」と述べた。

創出されたJCMクレジットは、今後拡大が見込まれる国内GX-ETS市場において、排出枠超過分の削減に活用可能となる見通し。両社は2026年の商用化後、フィリピン国内の他地域や東南アジア諸国への展開も検討しており、アジア全体でのカーボンクレジット創出に寄与する考えだ。

日本政府はJCMをNDC(国別削減目標)達成の柱と位置づけ、2030年度までに累計1億t-CO2、2040年度までに2億t-CO2の国際的削減・吸収を目標としている。今回のプロジェクトは、その達成に向けた農業分野の重要な一歩となる。

参考:https://www.kanematsu.co.jp/press/release/20251016_release

参考:https://green-carbon.co.jp/jpgreencatbon-kanematsu/