10月10日、JGCホールディングス(JGC)と、ノルウェーのフォルネビューを拠点とする炭素回収技術大手SLBキャプチュリ(SLB Capturi)、およびその親会社である米国SLB(旧シュルンベルジェ)は、「ポスト燃焼型CO2回収技術」に関する戦略的協業の検討を目的とする覚書(MoU)を締結した。両社は、アジア太平洋および中東市場における炭素回収・貯留(CCS)需要の高まりを背景に、技術とエンジニアリング力を統合し、包括的な脱炭素ソリューションを展開する方針を明らかにした。
本協業は、SLBキャプチュリのCO2回収技術と、JGCグループが培ってきた大規模プラントのエンジニアリング実績を組み合わせ、設計初期段階から建設・運用に至るまで一貫したCCSソリューションを提供する狙いがある。両社は特に、産業部門の排出削減が急務となるアジア太平洋および中東地域で、今後10年間にわたり急成長が見込まれる市場を共同開拓する構えだ。
JGCグループは、アルジェリアやオーストラリアで天然ガス由来のCO2を回収・貯留するCCS施設を完成させた実績を有する。中期経営計画「Beyond Smart Project 2025(BSP2025)」では、CCS事業の拡大を成長戦略の中核に位置づけており、特に火力発電所や製造業の排ガスからのポスト燃焼型CO2回収に注力する方針を示している。
同社はエンジニアリング、調達、建設(EPC)事業に加え、シミュレーション、リスク評価、環境分析などを統合した技術コンサルティングも強化し、エネルギー・環境分野における包括的な支援体制を構築する考えだ。これにより、単なる施設建設業者から、脱炭素戦略の設計段階から関与する「パートナー企業」への転換を目指す。
一方、SLBキャプチュリはSLBとアーカー・カーボン・キャプチャー(Aker Carbon Capture)の合弁会社であり、欧州ではセメントプラント向けとして世界初の商業規模CCSプロジェクト「ブレヴィクCCS(Brevik CCS)」をはじめ、オランダのトウェンスCCU、デンマークのオーステッド・カルンボーCO2ハブ、ノルウェーのハフスルンド・セルシオCCSなど、複数の主要プロジェクトで採用実績を持つ。
今回の協業を通じて両社は、欧州での成功事例を基盤に、アジアおよび中東の重工業分野における低炭素化を支援し、スケーラブルでコスト効率の高いCO2回収ソリューションを普及させることを目指す。
JGCの担当役員は「本提携は、JGCが持つエンジニアリング力とSLBキャプチュリの技術力を融合し、脱炭素の実装を加速する重要な一歩だ」と述べた。SLBキャプチュリ側も「アジアと中東は次のCCS成長地域であり、JGCとの協働がその鍵を握る」とコメントしている。
両社は今後、協業範囲の具体化に向けた技術・市場検討を年内にも開始する予定であり、2026年以降に共同プロジェクトの立ち上げを目指す。
参考:https://capturi.slb.com/resources/news/2025/mou-signed-with-jgc-group