ドイツ政府、脱炭素へ総額60億ユーロの支援策を発表 「CO2回収・貯留技術」を初採用

村山 大翔

村山 大翔

「ドイツ政府、脱炭素へ総額60億ユーロの支援策を発表 「CO2回収・貯留技術」を初採用」のアイキャッチ画像

ロイター通信によると、ドイツのカタリーナ・ライヒ経済・エネルギー相は6日、産業部門の脱炭素化を目的とした総額60億ユーロ(約9,400億円)の新支援プログラムを発表した。今回初めて、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術が「気候保護契約」に組み込まれる。

このプログラムは化学、鉄鋼、セメント、ガラスなどの高エネルギー消費産業を対象とし、企業は12月1日までに翌年度の入札対象となるプロジェクト登録を行う必要がある。入札は2026年半ばに開始される予定で、連邦議会による予算承認および欧州連合(EU)による国家補助審査を経て実施される見通しだ。

政府は15年間の契約を通じ、脱炭素化投資を進める企業に対してコスト補助を行い、エネルギー価格やカーボンプライスの変動リスクを緩和する方針である。補助金は競争入札方式で配分され、1トンのCO2削減に必要な補助額が最も少ないプロジェクトが優先採択される。採択企業は、契約期間中に達成すべき排出削減目標を法的拘束力のある形で設定される。

今回の制度改正は、前年のプログラムを拡大したものであり、CCS技術の導入が新たな特徴だ。CCSは排出源でCO2を分離・回収し、地中深くに安全に貯留する技術で、重工業分野の実質ゼロ排出化に向けた「過渡的技術」として国際的に注目されている。

ドイツ産業界からは今回の方針に支持の声が相次いだ。業界団体は声明で「CCSを含む柔軟な制度設計は、脱炭素化と競争力維持の両立に必要な現実的アプローチだ」と評価した。背景には、欧州内での高エネルギーコストや産業活動の低迷に対する懸念がある。

ドイツ政府は2030年までに1990年比で排出量を65%削減する目標を掲げており、今回の制度拡充はその達成に向けた重要な一歩と位置づけられる。入札に向けた準備は2026年半ばに本格化する見通しだ。

参考:https://www.reuters.com/sustainability/climate-energy/germany-launches-6-bln-eur-industrial-decarbonisation-program-includes-ccs-2025-10-06/