飲料用の液化CO2を大気から直接生成 DACと液化技術を一体化し商業展開へ

村山 大翔

村山 大翔

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オランダ・アムステルダム発、直接空気回収(DAC)技術を手がけるスカイツリー(Skytree)は、大気中から捕集しCO2をその場で液化し、飲料業界が求める純度基準を上回る「液化CO2」を生成することに成功した。同社がオランダ・アルメレ拠点で実施したプロトタイプ機「スカイトゥリー・ストラトス・アルファ(Skytree Stratus Alpha)」の検証試験により、実用レベルでのCO2液化が確認された。

スカイツリーによると、ストラトス・アルファは大気から約98%純度のCO2を直接回収し、これを液化処理することで99.98%の高純度CO2を生成した。国際飲料技術者協会(ISBT)が定める「飲料グレード」基準(99.9%以上)を上回る結果であり、食品・飲料業界向けの分散型CO2供給の新たな選択肢となる。

液化CO2は輸送・貯蔵が容易で、回収地点と利用地点を切り離すことができる。特に温室栽培などでは、電力が安価な夜間に捕集を行い、液化CO2を貯蔵して昼間に使用することでエネルギー効率を高められる。これにより、運用コストの削減と再エネ電力の有効活用が期待される。

スカイツリー最高技術責任者(CTO)のヴォイチェフ・グラゼック氏は「スカイツリーは、エネルギー効率・高純度・気象に左右されない生産性を一体化した完全なDACソリューションを実現した。当社の高い初期CO2純度により液化プロセスが簡素化し、他システムで発生する15%以上のCO2損失を回避できる。年間を通じて生産性が安定し、従来型DAC設備の収益性を損なう±20%の季節変動を解消した」と述べた。

ストラトス・アルファはすでに実地運転を継続しており、得られたデータは2026年に予定される商業版「スカイツリー・ストラトス」シリーズの改良に反映される。同社は数千時間に及ぶ稼働実績を蓄積しており、技術信頼性を段階的に実証している。

スカイツリーは2014年創業のオランダ企業で、欧州宇宙機関(ESA)の技術を基盤にDAC装置を開発。カナダ・トロント、米ナッシュビルにも拠点を持つ。既存の小型機「キュムラス(Cumulus)」シリーズはすでに世界各地で稼働しており、「ストラトス」シリーズでは年間200万トン超のCO2回収案件が進行中だ。

同社の技術は、回収したCO2を液化して飲料用や温室用などで即利用できることから、「炭素除去」と「CO2資源循環」を両立する分散型モデルとして注目されている。将来的にはDAC由来の液化CO2が飲料・農業・燃料合成分野における脱化石化を後押しする可能性が高い。

参考:https://skytree.tech/en-en/news/skytree-dac-system-pure-beverage-grade-liquid-co2