持続可能な食料・農業投資を手がけるシバス・キャピタル(Cibus Capital LLP)は、新たにオーストラリアの植林型カーボンプロジェクトに特化したファンド「Cibus Carbon」を立ち上げた。同ファンドは最大3億豪ドル(約300億円)の資金調達を目指し、今後30年間で約1,125万トン分のオーストラリアカーボンクレジット(ACCU)を創出する計画である。
Cibusは声明で、オーストラリアのカーボンクレジット市場が今後10年以内に世界最大規模に成長すると予測した。背景には、規制強化によるコンプライアンス需要と、ボランタリーなカーボンオフセット需要の拡大がある。市場推計によれば、ACCUsの純需要は2025年の1,500万トンから2030年には4,400万トンに達する見込みだ。
ファンドの運営は豪州子会社Cibus Carbon Investments Pty Ltdが担い、デーモン・ペトリ氏とジェレミー・アラン=ジョーンズ氏が指揮する。さらに、関連資産運用会社ではサイモン・キャンベル氏(コンサルタントCEO)とグラント・トランター氏(コンサルタント主任科学者)が参画する。投資先の土地は独自の分析システムで選定され、土地取得コストに対して生成できるカーボンクレジットの効率が高い場所を重視する。
シバス創業者で最高投資責任者(CIO)のロブ・アップルビー氏は「『Cibus Carbon』は生態系の保全と価値創造を両立するものだ。我々の戦略は、企業のネットゼロ達成を支援すると同時に、地域社会や投資家に幅広い恩恵をもたらす」と述べた。
また、ペトリ氏は「自然由来の排出削減策は気候変動対策の道筋において主要な役割を果たす。豪州の炭素市場は成長と成熟のスピードから見て、機関投資家が本格的に参入すべき好機を提供している」と指摘した。
シバスは既に豪州の大規模苗木生産者ウィズコット・シードリングスをポートフォリオに持ち、大規模植林や種子供給に関する専門知見を蓄積している。この経験と新技術を組み合わせることで、高品質ACCUsの創出において新たな基準を打ち立てることを目指す。
今後の市場拡大に伴い、Cibus Carbonが調達を完了し本格運用に入るかどうかが注目される。2030年にかけての需給逼迫が、投資収益と同時に環境・地域社会への貢献を実現できるかの試金石となる。