CUR8 「脱炭素インフラのOS構築へ」 シードラウンドの資金調達

村山 大翔

村山 大翔

「CUR8 「脱炭素インフラのOS構築へ」 シードラウンドの資金調達」のアイキャッチ画像

炭素除去(CDR)の市場インフラを提供するキュレイト(CUR8)は、米エアバス・ベンチャーズ(Airbus Ventures)が主導するシードラウンドで資金調達を実施したと、ニューヨークで開かれた気候変動関連イベント「Climate Week NYC」の場で発表した。既存投資家のGV(グーグル・ベンチャーズ)やオランダのキャピタルT(CapitalT)も参加した。

今回の調達により、CUR8は「兆ドル規模産業」と目されるCDR市場の中核インフラ構築を進める立場を固めた。航空、金融、消費財、不動産など多様な業種の企業と提携し、英ブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways)、スタンダード・チャータード銀行(Standard Chartered Bank)、コカ・コーラHBC(Coca-Cola HBC AG)などを顧客に持つ。

背景には、各国で進む政策対応がある。英国政府は炭素取引制度(ETS)にCDRを正式導入し、ドイツ政府は5,000万ユーロ(約82億円)のCDR予算を確保した。シンガポール政府も公共調達にCDRを組み込み、市場規模は2025年に80億〜100億ドル(約1兆2,000億〜1兆5,000億円)と、2024年比で3倍成長する見通しだ。

CUR8は今年に入り、CDRプロジェクト向けのオフテイク契約ファイナンス商品や企業向け計画ツールを投入しており、今回の資金は製品開発、金融機能の拡充、国際展開に充てる。CEO兼共同創業者のマルタ・クルピンスカ氏は「兆ドル産業を築くには大胆な投資が必要だ。航空やビッグテックが先導する中、今回の投資はCDRの事業価値を裏付けるものだ」と述べた。

主導投資家エアバス・ベンチャーズのパートナー、ニコール・コナー氏は「CUR8は科学主導・技術駆動のB2Bプラットフォームとして信頼を確立しつつある。CDRを新たな資産クラスと位置づけ、投資と調達を結びつける基盤作りは不可欠だ」と指摘した。

GVのパートナー、ルナ・シュミット氏も「買い手、売り手、金融機関を結びつける統合プラットフォームは市場拡大に不可欠だ」と評価を示した。

また、エアバス・ベンチャーズのコナー氏がCUR8の取締役に就任し、クルピンスカCEO、共同創業者でチーフサイエンティストのガブリエル・ウォーカー氏、GVのシュミット氏と並び、同社はベンチャーキャピタル支援を受ける急成長企業としては珍しい全員女性の取締役会を構成する。

参考:https://www.cur8.earth/blog/seed-fundraise