アメリカの炭素除去(CDR)事業者チェスナット・カーボン(Chestnut Carbon)は7月23日、J.P.モルガン(J.P. Morgan)を中心とする複数の銀行から、最大2億1,000万ドル(約336億円)の融資を受ける契約を結んだと発表した。この融資は、借り手の返済責任を限定する「無追索型」と呼ばれる形式で、ボランタリーカーボンクレジット市場における植林プロジェクトへの融資としては、前例のない取り組みとなる。
融資の背景には、チェスナットがマイクロソフト(Microsoft)と結んだ長期の炭素除去契約がある。この契約では、アメリカ各地で進められる植林や再植林、緑化(ARR)活動によって吸収される二酸化炭素が、カーボンクレジットとして取引される。
この資金調達には、J.P.モルガンのほか、コバンク(CoBank)、モントリオール銀行(Bank of Montreal)、イースト・ウエスト銀行(East West Bank)などが参加。プロジェクトのリスク評価には、環境コンサル企業のERMが関与し、プロジェクトの実現性、地域社会への影響、追加性や恒久性などを細かく審査した。
チェスナットの最高財務責任者グレッグ・アダムス氏は「この融資は、チェスナットだけでなく、炭素除去業界全体にとって画期的な一歩だ」と述べた。また、「この仕組みは、持続可能な資金調達モデルとして、他のプロジェクトにも応用できる」と強調した。
J.P.モルガンの炭素移行部門を率いるヴィニャン・バッチュ氏も「CDR事業者が安心してプロジェクトに取り組めるよう、競争力のあるコストで長期資金を提供できる体制を築くことが重要だ」とコメントした。
チェスナットは、すでにマイクロソフトと700万トン分の炭素除去契約を結んでおり、今後も植林を軸にプロジェクトを拡大する計画だ。