国際的なカーボンクレジット認証機関であるGold Standardは23日、「抑えられた需要(Suppressed Demand)」に対応するための新たな方法論ルールを発表し、意見募集を開始した。
これは、基本的な生活サービスをまだ十分に受けられない地域でも、将来の排出量を想定してカーボンクレジットを発行できるようにする仕組みで、パリ協定第6条4項に沿った国際的なルール作りの一環である。
「ないものは測れない」問題に対応 未来の排出量を基準に
今回の新ルールでは、電気・水・調理・冷暖房・教育・医療など、人々の生活に欠かせないサービスの「最低限必要な量(MSL)」と「サービスの質(MSQS)」を設定する。
たとえば、1人あたり年間1,000kWhの電力や1日あたり15〜50Lの飲料水がMSLとされ、これらが今後さらに増えると見込まれている。また、サービスの質についても、調理器具はISO基準のTier3以上、水は国連が定める「安全に管理された水」が必要とされる。
この考え方の背景には、「サービスがない地域では排出量がゼロになってしまうため、カーボンクレジットも得られない」という矛盾がある。新ルールでは、将来的にサービスが導入された場合の排出量を「潜在的な排出量」として見込み、それを基準にカーボンクレジットを発行できるようにする。
かつてのCDM(クリーン開発メカニズム)では、排出削減の効果を証明するためには「まず汚す」必要があった。つまり、一度化石燃料などを使って排出を増やさないと、それを減らすカーボンクレジットが得られなかった。
しかし、今回の新ルールはこの問題に対処し、「初めからクリーンな技術でサービスを提供する」事業にもカーボンクレジットを与える道を開く。これにより、開発途上国での再生可能エネルギーや安全な水の普及が加速することが期待されている。
正式なルールとしての発行は2025年内が予定されており、今後のカーボンクレジット市場において重要な位置づけとなる。