シンガポールの気候金融フィンテック企業インフラブロックス・テクノロジーズ(InfraBlocks Technologies)は、ニューヨークで開催中の「NYC Climate Week 2025」で、竹を活用した炭素クレジットをデジタルで監視する新プラットフォームを発表した。アジア開発銀行(ADB)、シンガポールのクミ・アナリティクス(Kumi Analytics)、米バンク(BanQu)、竹建材企業リゾーム(Rizome)と提携し、人工衛星画像やブロックチェーンを活用したデジタル測定・報告・検証(dMRV)を導入する。第一弾としてフィリピンのリゾーム社の竹プランテーションを対象に、アジアで初めてカーボンクレジットを発行する予定だ。
この新システムは、竹の成長速度や炭素固定量を高精度に測定し、透明性を確保することでコストを削減し、自然由来の炭素除去(CDR)事業への資金流入を促進する狙いがある。インフラブロックスは、これをアジア全域に展開可能なモデルとして位置づけ、パリ協定第6条に準拠したカーボンマーケットの拡大を目指す。
インフラブロックス共同創業者で最高経営責任者(CEO)のセドリック・ジュテ氏は「ADBと連携し、竹を対象としたデジタルエンジンを構築することで、最も強力な自然由来の気候解決策の一つに資金を動員したい」と述べた。
また、共同創業者で社長のシュボモイ・レイ氏は「我々の使命は、気候の信頼性と金融革新を橋渡しすることにある。衛星監視やブロックチェーンを組み合わせることで、世界的にカーボンプロジェクトの資金調達と拡大の仕組みを再定義できる」と強調した。
リゾームはフィリピンで大規模な竹プランテーションを展開しており、竹は樹木の約15倍の速度で成長し、短期間で炭素を吸収できる特徴を持つ。さらに、地理情報タグによってプランテーションを追跡可能であり、デジタルMRVに統合しやすい点も評価されている。
パートナー企業もこの取り組みに期待を寄せる。クミ・アナリティクス創業者のクリントン・リビー氏は「衛星画像と地理空間解析によって透明性を確保し、高品質なカーボン市場を支える」と述べ、バンクのアシシュ・ガドニスCEOは「竹農園を株単位でジオタグし、製品や炭素クレジットまで追跡できる仕組みは画期的だ」と指摘した。
今回の取り組みは、インフラブロックスがこれまでアジア開発銀行やシンガポール金融管理局と協業してきたデジタルMRVの知見を活用するもので、今後はアジア太平洋地域全体におけるカーボンクレジット市場の拡大に波及するとみられる。